「水の手紙 群読のために」(井上ひさし著、萩尾望都絵、平凡社、2013年)
小学生の副読本にでもなるような平易な文章。
井上さんの芝居や小説、エッセイを知る者には物足りない。
けれども、そこは井上ひさしさん。
山形の山々に降る雨や雪は、森や林を潜り、最上川に集められ、日本海へ、そこからゆっくりと七つの海に広がり、この水惑星をつくりあげている、とまとめています。
「この水の想いを、いま目の前にある一滴の水に封じ込めて、最上川へ流します」。
「この想いは、きっと地球のありとあらゆるところへひろがって行くでしょう」。
井上ひさし最後の戯曲「組曲虐殺」の中で、小林多喜二は歌いました。
「ワルをうちこらし ボロをうちすてて 飢えをうちはらい 寒さうちやぶり 虹にしがみつけ あとにつづくものを 信じて走れ あとにつづくものを 信じて走れ」
井上さんの想いは、そして、その想いをわかちあうわたしたちの想いも、山、川、海、空をめぐり、また、あちこちで、ひょっこり花を咲かせることでしょう。