94 「ケセンの黄金伝説は、えっ、そんなところにまで」

「ヒタカミ黄金伝説」(山浦玄嗣、共和印刷企画センター、1991年)
 
 ケセンは黄金の大産地だった。しかし、八世紀、ヤマトはそれに目をつけ、侵略を激しくする。ケセンやエミシ(※)の民は、アテルイなどのリーダーを掲げ、よく抵抗する。

 ヤマトの支配浸透は著しかったが、エミシが滅ぼし尽くされたわけではない。平泉藤原氏にもエミシ民族の生は受け継がれ、金色堂などは、エミシの文化と技術抜きには考えられない。

 ケセンの黄金の伝説は形を変え、中国に伝わり、それがチパング伝説になり、ヨーロッパの「大航海時代」を呼び起こす。鉄砲やキリスト教伝来も黄金の国チパングと無縁ではない。

 コロンブスに対する評価には疑問がある、というか、コロンブス以降の西洋による「新大陸」先住民侵略に対する批判が不十分だと思うが、ヤマトによるエミシの侵略を知り尽くし、ケセン語訳聖書まで創り出し、気仙に根を下ろして、生き、働くケセン人山浦先生だから、お考えがあるのだろう。
 
 西欧、ヤマト、京都、江戸、東京ではなく、気仙(ケセン)を中心にした歴史観が痛快。

※エミシ:著者によると、元来は「気高き勇者」という意味だが、ヤマトは「蝦夷」という侮辱的な文字を当てたということらしい。

 入手したい方はhttp://www.epix.co.jp/authors/harutsugu_yamaura/index.html をご覧になり、メールで問い合わせると良いと思います。