「ヒタカミ黄金伝説」(山浦玄嗣、共和印刷企画センター、1991年)
ケセンは黄金の大産地だった。しかし、八世紀、ヤマトはそれに目をつけ、侵略を激しくする。ケセンやエミシ(※)の民は、アテルイなどのリーダーを掲げ、よく抵抗する。
ヤマトの支配浸透は著しかったが、エミシが滅ぼし尽くされたわけではない。平泉藤原氏にもエミシ民族の生は受け継がれ、金色堂などは、エミシの文化と技術抜きには考えられない。
ケセンの黄金の伝説は形を変え、中国に伝わり、それがチパング伝説になり、ヨーロッパの「大航海時代」を呼び起こす。鉄砲やキリスト教伝来も黄金の国チパングと無縁ではない。
コロンブスに対する評価には疑問がある、というか、コロンブス以降の西洋による「新大陸」先住民侵略に対する批判が不十分だと思うが、ヤマトによるエミシの侵略を知り尽くし、ケセン語訳聖書まで創り出し、気仙に根を下ろして、生き、働くケセン人山浦先生だから、お考えがあるのだろう。
西欧、ヤマト、京都、江戸、東京ではなく、気仙(ケセン)を中心にした歴史観が痛快。
※エミシ:著者によると、元来は「気高き勇者」という意味だが、ヤマトは「蝦夷」という侮辱的な文字を当てたということらしい。
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