630    「みすゞとYouTubeとキャロライン洋子」 ・・・ 「NHK100分de名著 金子みすゞ詩集 2022年1月」(松本侑子、NHK出版、2022年)

 みすゞは雑誌に童謡詩を投稿し、よく掲載されていました。「今なら、You Tubeで自作の詩や歌を披露して若者の人気を集まるアーティストにたとえることもできましょう」(p.13)と著者は言います。

 

 しかし、それ以上は進まなかったようです。詩集出版にはいたらなかったのです。みすゞは手書き詩集ノートにこう書きます。

 

 「できました、できました、かわいい詩集ができました。我とわが身に訓(おし)うれど、心おどらず、さみしさよ。」(p.87)。

 

 「とにかくに、むなしきわざと知りながら、秋の灯の更くるまを、ただひたむきに、書きて来し。」(p.88)。

 

 523作の詩をノート三冊に書いて、西條八十と、弟で文藝春秋社の編集者である上山雅輔に送りますが、出版します、という返事は来ないのです。

 

 けれども、没後54年、みすゞは発掘され、全集が刊行されます。みすゞの詩は教科書にも載りました。

 

 ひたすら書いたことは、むなしきわざではなかったのです。

 

 この本には、みすゞの詩が何編か引用されていますが、著者によるその読み下しが、すなおかつわかりやすくて、詩の味わいを深めてくれます。

 

 弟の上山雅輔は劇作家となり、劇団若草を立ち上げ、竹脇無我音無美紀子ら、子役では、キャロライン洋子杉田かおる吉岡秀隆らを育てます。雅軸とみすゞは青年期、文学愛好仲間でもあり、雅軸はみすゞの童心をよく知っていたでしょう。それがどこかで子役育成につながっているのかもしれません。

 

 

https://www.amazon.co.jp/NHK100%E5%88%86de%E5%90%8D%E8%91%97-%E9%87%91%E5%AD%90%E3%81%BF%E3%81%99%E3%82%9E%E8%A9%A9%E9%9B%86-2022%E5%B9%B41%E6%9C%88-%E6%9D%BE%E6%9C%AC-%E4%BE%91%E5%AD%90/dp/4142231359/ref=sr_1_29?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=1AKOMJOLZFP0H&keywords=%E6%9D%BE%E6%9C%AC%E4%BE%91%E5%AD%90&qid=1644897074&sprefix=%E6%9D%BE%E6%9C%AC%E4%BE%91%E5%AD%90%2Caps%2C170&sr=8-29