貧しく横暴で乱暴な父親に虐待されていた少年。けれども、ある日、奴隷として売られる直前に、馬に誘われ、逃げ出します。
少年は、旅をしつつ、馬を駆ることを馬自身に教えられ、自分とはまったく違う境遇の少女と出会い、見たこともないような世界に触れ、勇気を育て、ついには・・・。
ぼくも親父によく怒鳴られたり殺されそうになったりしたもので、子どものころは、本の主人公たちのように本当の父が別にいてくれたらなあ、などと思ったりしたものでした。
はたちを過ぎたあたりで、「親の愛はだいじだが、親から必要な愛を得られなかった人は、神からそれを受ければ良い、そのための神だ、神が父と呼ばれるのはそのためだ」という話を聞いて、なるほどなあ、と感心しました。
晩年は、親父も、怒鳴ったり殺そうとしたりしなくなったので、関係は悪くなくなったように思います。ぼくの子どもたちも、かわいがってくれましたし。
ところが、今度は、ぼくが子どもたちをおさえつけ、傷つけてしまっています。子どもたちにも、この本を読ませたいですね。
二千年の昔、貧しい大工の子どもが粗末な馬小屋で生まれました。大工のことは、その後、語られることはありませんでした。暴力親父だったとも述べられていませんが。
三十才くらいになったこの子どもが、川で洗礼を受けたとき、「これは、わたしの愛する子」という声が、天から聞こえてきました。
この子どもが息を引き取るのを見て、ある人が「この人は、神の子だ」と言いました。