399 「大空ときんかくし」   「石垣りん詩集」(石垣りん著、伊藤比呂美編、岩波文庫、2015年)

 詩人は天からの声を書きとめる、と聞いたことがあります。ならば、詩人は天を仰いでいるのかも知れません。石垣りんさんもそのようです。

「私は私の持つ一切をなげうって
 大空に手をのべる
 これが私の意志、これが私の願いのすべて!」

 けれども、

「家の上にあるもの
 天空の青さではなく
 血の色の濃さである」

「負えという
 この屋根の重みに
 女、私の春が暮れる
 遠く遠く日が沈む」

 天どころか屋根です。屋根どころか水平線より降るのです。

 編者の伊藤比呂美さんもこう記しています。

石垣りんの書いたきんかくしは、ただ尿をひっかければいいきんかくしではなく、糞臭のきつい便所に這いつくばって、拭き掃除をしないとわからないきんかくしなのである」

 まさに地べたです。生活です。では、りんさんの天はどこに行ってしまったのでしょうか。

 そういえば、やはり詩人の金芝河が「飯は天」と言っていました。

 そういえば、聖書にも飲み食いの話がやたらと出てくるのでした。


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