負けないいのちの詩

27 「海の上に手を掲げよ」

ファラオが追いかけてきます 後から襲いかかってきます どうして、我々をエジプトから 連れだしたりしたんですか 放っておいてください こんな荒れ野で野垂れ死にするより ファラオの奴隷でいた方が ずっとましです と言ったではないですか 恐れてはならない…

26 「昼も夜も離れない」

おまえらの主とやらが 我らを撃つことは これで良く分かった ここから出て行ってくれ どこにでも行って おまえたちの主に跪くがよい おまえたちの自由に仕えるがよい わたしはおまえたちの主 寝ずの番をして 奴隷から自由へと解き放つ 約束通りおまえたちを…

25

「あなたたちは撃たない、血と涙を流したから」 無傷の小羊を一匹用意しなさい あなたたちも無傷だったから 夕暮れにそれを屠り、血を取りなさい あなたたちも闇夜に切り裂かれ、血を流されたから その血を柱と鴨居に塗りなさい あなたたちも血塗られたから …

24 「王の悲鳴が闇に走る」

わたしは王に もうひとつ災いをくだす 王はおまえたちを解き放つ ひとり残らず解き放つ わたしは真夜中の エジプトを進む わたしは王を撃つ その座から引き下ろす 王の座を打ち壊す 王の悲鳴が闇に走る だが、おまえたちには 傷一つ負わせない おまえたちは…

23  「二度とお会いすることはありますまい」

突き上げよ 両手を天に突き上げよ 夜の帳を引きおろせ この地を闇で包み込め 人びとの指を漆黒に染めよ たがいの顔が見えなくなるまで 真っ黒に塗りつぶせ そこから一歩も動けないように 暗闇で取り囲め だが、おまえたちの上には光がある おまえたちはわた…

22 「頑なな王に神がなすしるしをしかと見よ」

王のもとへ行け 支配者の門前に集まれ 王とその取り巻きの心理は 城の石のごとく頑迷だ しかし、わたしは その前でしるしを行う おまえたちはそれを しかと見よ わたしが彼らに何をなすか おまえたちはしかと見よ わたしが主であることを しかと知れ われら…

21「民を縛ることは不正義、民を放つことが正義」

明朝六時 王の門の前に集い 高らかに告げよ わたしの民を解き放て 王ではなく自由に仕えさせよ わたしは、今度こそ、王国を滅ぼす いや、これまでもそうしてきた いくどもそうしてきた さきの疫病でそうすることもできた しかし、王国を生かしておいた 不正…

20「わたしの民を解き放て、自由をこそ民の主人とさせよ」

王のもとへ行け 支配者の門(ゲート)に集まれ 声高く彼らに告げよ こぶしより高く声を上げよ われらの神はこう言うと 天の声はこう響くと わたしの民を解き放て 自由をこそ民の主人とさせよ おまえがこれを拒むなら 民を縛り続けるなら おまえの町に疫病を…

18

「彼らの心は頑なだ、わたしもよくわかっている」わたしはあなたたちを かならず解き放つ しかし、王の心は頑なだ すぐには変わらない 主よ、そうなのです 王や家来の心は頑なです だが、あきらめてはならない この杖で水を打て 血に変わる 魚は死ぬ 悪臭が…

17

「あなたたちはいのちの民となり わたしはあなたのいのちとなる」 わたしは主(ぬし)だ あなたたちのいのちの主だ あらゆるいのちは わたしから湧き出ている わたしはこれまでも いつでもどこでも いのちを湧き出し続けてきた あらゆる歴史の場面で あらゆ…

16

「神は御手を動かし ファラオはあなたらを解放する」 神が言われた わたしの民を去らせよ 荒れ野に行かせよ わたしに会わせよと 神がどうした 神など知らぬ そんな奴の言うことなど聞かぬ 民は行かせぬ 神がわれらに現れた 荒れ野までここから三日 民を行か…

16

「神は御手を動かし ファラオはあなたらを解放する」 神が言われた わたしの民を去らせよ 荒れ野に行かせよ わたしに会わせよと 神がどうした 神など知らぬ そんな奴の言うことなど聞かぬ 民は行かせぬ 神がわれらに現れた 荒れ野までここから三日 民を行か…

15 「わたしがあなたに言葉を湧きあがらせよう」

暴君の力は強大です 倒すすべがありません 恐れるな 蛇をつかめ 手を伸ばせ 暴虐者の尾をつかめ 人びとは聞いてくれません 信用してくれません 勇気を出せ 手を伸ばせ 負傷者に肩を貸せ 病者に手を当てろ 暴君も聞いてくれません 民の叫びにも耳を傾けません…

14・・・「わたしがいる、あなたと腕を組んでいる」

助けてください 彼らは強いるのです 鞭で打つのです 足で蹴るのです 踏みつけるのです 唾を吐くのです ここから救い出してください ああ、声が聞こえる 地から叫び声が聞こえる 助けを求めている 聞かないでおられようか そのままにしておけようか 心の真ん…

13「この子を越也と名付けよう 境を越えたからだ」

なんとひどい仕事を強いられているのか わが同胞たちは ああ、あの男は、わが同胞を 鞭で打った 足で蹴った 踏みつけた 唾を吐いた 赦せない わが同胞に何をするんだ おまえは赦せない 仲間をこんな目に遭わせて 絶対に赦せない ああ、今度は 同胞同士のけん…

12・・・「神はこの子を引き上げてくださった」

おまえらが憎い おまえらが恐い だが、おれの王座を脅かそうとしても無駄だ おまえらに命じる 男の子が生れたら みな、ナイル川に放り込め なんてかわいい子だ 川に放り込むことなんてできない ずっとここに隠しておこう 日に日に泣き声が大きくなる もはや…

11…「わたしはこの子を殺しません、神が許しません」

どうしてここに こんなやつらが こんなにうようよしているんだ 増えるばかりじゃないか おそろしいことだ やつらは集まって何をしているんだ 何かよからぬことをたくらんでいるんじゃないか おそろしいやつらだ やつらをこれ以上のさばらせてはならない やつ…

10・・・「あの人を呼び戻さなければならない」

どうですか こちらの生活にはもう慣れましたか ありがとうございます だいじょうぶです 何でもわからないことがあったら 遠慮なく訊いてください ありがとうございます たすかります ああ、そうだ 今度良かったらご飯でも いっしょにいかがですか ありがとう…

9

「深い淵からふたたび引き上げてくださった」 なんだ、こいつは なまいきだな だれだ、こいつは こんなやつ、知らないぞ こんな名前、聞いたこともない 勝手にしゃべりやがって えらそうなこと、言いやがって 雑魚のくせして その他大勢のくせして ふざけや…

8・・・「わたしはこの土地であなたたちを守り続ける」

あいつらだけは絶対に赦せない おれたちを差し置いて あんな汚いやり方で 自分たちだけ特権を 手に入れやがって あいつらだけは生かしておけない 大変です あなたたちはこのままここにいると 殺されてしまいます 遠くに逃げなさい 自分たちのしていることに …

7・・・「わたしはその子のいのちを求めない」

おまえの持っているものは どうやって手に入れたのか すべてはあなたが 与えてくださいました そのすべてを わたしに返すことができるか はい、あなたはすべてをくださいました わたしはすべてをお返しします わたしはすべてをおささげします では、おまえの…

6「ああ、あそこに井戸がある」

なにもかもおまえが悪いんだ おまえがここにいるからいけないんだ おまえのようなものが 何を偉そうにしているんだ さあ、ここから出て行け もう逃げるしかない でも、どこに行けばよいのか この荒れ野はどこまでつづくのか ああ、あそこに泉が ああ、あそこ…

5「来年、もう一度、わたしはここに来る」

なんて歴史なんだ なんて世の中なんだ あんなに叫んだのに あんなに訴えたのに なんて人生なんだ なんて生涯なんだ こんな年になってしまった こんなざまで もう終わってしまうんだ あなたを祝福しよう あなたに恵みを与えよう もう何年も残されていないのに…

4「発ちなさい」

なんてひどい王だ なんてでたらめな連中だ 愛も知恵もなにひとつない あるのはただ劣情だけ ぼくたちの言うことは すべて斥ける 勝手奇妙なことを並べ立て すべてを決める 自分はずるくなどないとにやつく 正当なことだとうそぶく 多くの者が賛成しているな…

3

静かだったその島が 四十日四十夜 大雨に見舞われた 地は水で覆われた 水嵩は増し続け 丘の頂をも呑み込んだ 鳥も家畜も獣も虫も人も ことごとく息絶えた ただ箱舟だけが 海原に漂っていた 百五十日経っても 水は撤退しない と、小さな風が吹いた 風は日に日…

最後の角に差し掛かり いにしえのこころざしが 浮かび上がってきた 果たされる前に 旅は終わるだろう けれども こころざしは 引き継がれる 弟子はおらず 文字は残さず 感銘は与えずとも ぼくが知らず ぼくを知らない 誰かによって 地下流のように

敗戦は敗北ではない 勝てないことはあっても 負けて全員逃げ出したことなど いちどもない いくども敗戦を重ねてきた 勝った戦いなどほとんどない けれども もう誰も立ちあがらなくなったことも もう誰もつづかなくなったことも そんなことは いちどもない 世…