2018-01-01から1年間の記事一覧

(82) 「知らないうちに種が蒔かれ、実を結んでいます」

十余年前に教会の建物を建て替えました。そのさい、庭に木の苗を何本か植えました。オリーブ、いちじく、リンゴ。桃栗三年、柿八年と言いますが、たしかに、ここ数年、どの木もよく実を結んでいます。 オリーブは摘むと数籠にもなり、アクを抜いて漬けていた…

82   「偽りの証言をしてはならず、真実の証言をしなくてはなりません」

一人の偽証によって 暴力が事実とされてはならない けれども一人の被害者の 真実な証言によって 暴力の存在は 認められなければならない 偽証をする者 真実を証言しない者 私欲のために証言を拒む者 このような者たちが 繰り返し現れることを 許してはならな…

(81)「イエスは、羊飼いのような、友達のような」

自分の話ばかりして、こちらの話を聞いてくれない人。自分の意見を主張するばかりで、こちらの意見を理解しようとしない人。自分は傷ついたと言うが、相手も傷ついていることをわかろうとしない人。すみませんでしたと言われても、こちらこそすみませんでし…

423「出世とか改宗とかより、あいさつですね」 「ハートウォーミングストーリーwithノーマン・ロックウェル」(マーガレット・ファインバーグ、いのちのことば社フォレストブックス、2005年)

ロックウェルという画家の絵が左のページに。敗戦後の日本に伝わってきたような風味の、アメリカ合衆国の光景。女性が金髪クリクリパーマだったりしたような。 右のページは「小さなあいさつ」「お金では買えない宝物」「母の祈り」などと題された「心温まる…

422 「控えめなキリスト教色とゆたかな想像力」  「ナルニア国物語? ドーン・トレッダー号の航海」(C・S・ルイス著、土屋京子訳、光文社古典新訳文庫、2017年)

この世界の果てには何があるのでしょうか。この世界の果ての向うには、こんどは、どんな世界が待っているのでしょうか。誰が待っているのでしょうか。そこに行かないと会えないのでしょうか。それとも、向こうからこの世界に会いに来てくれるのでしょうか。 …

421 「生は、正反対に見えるものの中にこそあったのです」    「点滴ポール 生き抜くという旗印」(岩崎航、ナナロク社、2013年)

若松英輔さんの著作の中で紹介されていたので、ぼくも読んでみました。 タイトルにすべてが集約されています。 点滴バッグは、生命の危機、脆弱だけでなく、生命、希望、前進を意味していたのです。 「たたかいだ/これで/何回目かの/救急車に/乗る」 救…

81  「地境を侵してはならない」

隣人との地境を動かしてはならない 土地は主が与えたものだ あなたは軍艦で押し寄せ 人の土地に侵略してはならない 先に住んでいた人びとから 奪ってもならないし 追い出してもならない 殺してもならない あなたの土地に身を寄せる 人びとを虐待してはならな…

(80)「いつくしみふかい交わりが、閉ざされた心を開いてくれます」

立食パーティのように多くの人が集まり自由に語り合う場では、すこし緊張します。親しい人がいない場合は、顔見知りの人をみつけて、なんとか輪に入ろうとするのですが、どうも、ぼくなどが加わるとせっかくのお話しを邪魔してしまうのではないか、などと考…

419 「朝鮮芸能が日本を鼓舞する」    「吉本興業と韓流エンターテイメント――奇想天外、狂喜乱舞の戦前芸能絵巻」(高祐二、花伝社、2018年)

タイトル、サブタイトルは「わろてんか」に便乗するためのものだが、なかみは、1920年代から日本の敗戦までの、「朝鮮楽劇団」を中心としたコリアン・エンターテナー列伝。舞台は、中国大陸、朝鮮半島、そして、日本。 韓流ブームはとうに去ったが、2017年の…

417 「仏教に触れ、キリスト教を深める」  「高校生からの仏教入門 釈尊から親鸞聖人へ」(小池秀章、本願寺出版社、2009年)

人が救われることがあるとすれば、自分の精神や行為によるのではなく、人の外にあり、かつ、人を救おうとする意志、宇宙的意志、真理、絶対者、叡智によるものでなければならない。いや、これによって、すべての人は救われる。 これにまさる宗教理論、教義は…

418 「届かなかった否の声に意味はあるのか」 「チェ・ゲバラと共に戦ったある日系二世の生涯 革命に生きた侍」(マリー前村ウルタード、エクトル・ソラーレス前村著、松枝愛訳、キノブックス、2017年)

人びとや自分を苦しめる者にそれを止めさせようと言動を熾しても、なかなかうまくいかない。ときには、殺されてしまう。では、それは無意味だったのか。 チェ・ゲバラは1959年、キューバ革命を仲間や民衆と達成し、革命政権の要職に就く。1966年、今度はボリ…

80  「恨みで人を殺してはならない」

あなたは人を 殺してはならない 積年の恨みにより 人を殺してはならない 憎しみのあまり激昂して 待ち伏せし襲いかかり 人を打ち殺してはならない 木を切ろうと振り上げた斧の頭が抜けて 隣人に当たり死なせた者をも 殺してはならない その者は 逃れの町まで…

416 「権力といじめの傾向と対策いやヴィジョン」  「いじめのある世界に生きる君たちへ―いじめられっ子だった精神科医の贈る言葉」(中井久夫、中央公論社、2016年)

いじめは、力のある者が力のない者を虐げること、動けなくすることです。権力者による虐待、抹殺です。ですから、この本に書かれていることは、いじめをはじめ、女性差別など、あらゆる抑圧にあてはまります。この本は、その残酷さとそれに立ち向かう糸口が…

79  「預言者は神の正義を語る」

わたしは預言者を立てる わたしの言葉を語るなら わたしの正義と平和と愛を語るなら その人は預言者だ あなたたちはその人に聞け わたしは預言者の口に わたしの言葉を授ける 預言者は自分の言葉ではなく わたしの言葉を語る あなたたちはその人に聞き従え …

誤読ノート415 「まず神の愛、そして人間の賛美歌」 「ルターと

誤読ノート415 「まず神の愛、そして人間の賛美歌」 「ルターと賛美歌」(徳善義和、日本キリスト教団出版局、2017年) キリスト教の信仰にもいろいろなタイプがありますが、ぼくの場合は、「神に生かされ、愛され、ともにいていただくのにふさわしい人徳も…

414 「言葉は深呼吸をしてから発しましょう」 「詩と出会う 詩と生きる」(若松英輔、NHK出版、2017年)

詩とは何でしょうか。この本は、数多くの詩人や詩をとりあげながら、地下水をさがすかのように、この問いを掘り下げていきます。 「自分のなかに言葉になり得ない、しかし、見過ごすことができない何かが宿るとき人は、内なる詩人をよみがえらせる」(p.11)。…

413 「いま隣にいる人を好きでいられる幸せ」 「幼な子われらに生まれ」(重松清著、幻冬舎文庫、1999年)

重松清さんの本はいくつか読んできましたが、この作品のように初期に属するものは、今回、はじめてでした。心理描写にも文体にも、磨き切れていないものを感じましたが、このざらざらこそが、ぼくたちの生を忠実に写そうとする筆致のようにも思いました。 あ…

412 「神を受け取るハートとは」   「アウグスティヌス 『心』の哲学者」(出村和彦著、岩波新書、2017年)

宗教改革者ルターの紋章の中心には、十字架がありますが、これはハートの輪郭に収められています。(「ルターの紋章」でネット検索すれば見つかります)。つまり、「心」で十字架を受け取る、ということでしょうか。 ルターはアウグスティヌス修道会の出身で…

78   「主は王たちのいとうべき習慣を斥けられる」

ここは主の与えてくださった土地 あなたたちはここで 王たちのいとうべき習慣を けっして見倣ってはならない 子どもたちを虐待してはならない 他国や他人をみだらに敵視してはならない ただ自分たちの利益のためだけの法や政策を いかにも民を守るものだと …

77  「生涯読み返し、民と神とを畏れることを学び、憲法に誠実に生きよ」

もしあなたたちが司を立てるのなら 神なるわたしの意をうかがう者にせよ 司を同胞だけに制限してはならない 司は軍備を増してはならない 民をあのところに連れ戻してはならない あなたたちは二度とあの道を戻ってはならない 司は心を迷わすな 仕えるつれあい…

411 「目に見えないものに、最初に気付いたルーシー」 「カスピアン王子」(C・S・ルイス著、土屋京子訳、光文社古典新訳文庫、2017年)

「アスランはときに風聞であり、その援助はきまぐれであり・・・(中略)・・・むしろ、彼の存在の放つなにかが・・・(中略)・・・道理や宗教的規範を超えた深い聖性を感じさせる」(p.341)と解説者は記しています。 けれども、それは、初め、一番年下のル…

410 「貧しくてひとりぼっち。でもそこに天国があります」

「マローンおばさん」(エリナー・ファージョン、こぐま社、1996年) 生きている間によいことをしたら天国に行ける、という考え方には、どうもなじめません。 マローンおばさんは貧しくひとりぼっちでしたが、生きているうちから、すでに天国に生きていたの…

409 「牧師が弁護士から学んだノイズの必要性」  「信仰・希望・愛」(宮原守男著、教文館、2017年)

弁護士にして、日本基督教団の教会の信徒、ロッキード事件の主任弁護人、教文館代表取締役会長である著者の、礼拝での話、中高生時代の話、若い弁護士へのレクチャーなどが載っています。 弁護士としての以下のような見解は、牧師として、あるいは、ひとりの…

408「役者八人の遺骨を抱いた演出家」 「戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と『桜隊』の悲劇」(堀川惠子著、講談社、2017年)

演出家とは何をする人なのだろうか。脚本には演劇の柱であるセリフや大まかな舞台設定ぐらいしか書いていない。舞台で上演するには、これを、台詞の読み方、表情、全身のふるまい、複数の役者の動きなどで、肉をつけ、皮を貼らなくてはならない。演出につい…

76 「正義のみを追求し、正義の実を結ばせよ」

奴隷を解放した神、 いのちの神だけを王として まつりごとを行いなさい 息子、娘、解放奴隷、 寄留者、孤児、寡婦らとともに 解放の神に仕える まつりごとを行いなさい すべての町に 正義の裁判人と正義の役人を置き 正義の裁きで 民に正義を約束せよ 裁きを…

407 「自分の課題と相手の課題を区別すること」 「嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え」(岸見一郎、古賀史健著、ダイヤモンド社、2013年)

お金や健康のこともそうだが、人づきあいがうまくいかないことが一番苦しい。 この本は、そういう悩みにあらたな光をあててくれる。 「われわれは怒りを用いずとも意思の疎通はできるし、自分を受け入れてもらうことも可能なのです」(p.106)。 怒りを感じて…

406 「神学史は、解明史ではなく、神との交流史、瞑想史」

「キリスト教思想史2 アウグスティヌスから宗教改革前夜まで」(フスト・ゴンサレス著、石田学訳、新教出版社、2017年) 「中世・神学史」と呼んでも良いだろう。 科学は、物質の仕組みを解明することだ。基本的には答えがひとつでなければ、解明にならない…

75  「奴隷をいますぐ自由にしなさい」

同胞であろうとなかろうと 誰かを奴隷にしているのなら いますぐ自由の身にし ただちに解放しなさい ただし、手ぶらで行かせてはならない 家畜の群れと穀物と飲み物を 惜しみなく贈りなさい それは彼らの収穫なのだから 主が祝福されたものなのだから 思い起…

(79)「この世界はどこに行っても、神の家」

行ったことのない遠方に引っ越すことが不安でも、「同じ日本なのだから大丈夫」と思えば、気持ちが落ち着くこともあるでしょう。ほんとうは、それぞれの地に特徴があり、一緒くたにすることはできないにしても、同じアジアなのだから、同じ地球なのだから、…

74   「あなたがこれに従えば、貧しい者はいなくなる」

あなたの収入のいくらかを取り分けて 収入のない人 寄留者 孤児 寡婦と わかちあいなさい 同胞の負債を免除しなさい 外国人からも取り立ててはならない あなたがこれに従えば 貧しい者はいなくなる この戒めに じっと耳を傾け 忠実に守りなさい そうすれば …