407 「自分の課題と相手の課題を区別すること」 「嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え」(岸見一郎、古賀史健著、ダイヤモンド社、2013年)

 お金や健康のこともそうだが、人づきあいがうまくいかないことが一番苦しい。

 この本は、そういう悩みにあらたな光をあててくれる。

 「われわれは怒りを用いずとも意思の疎通はできるし、自分を受け入れてもらうことも可能なのです」(p.106)。

 怒りを感じてはならない、ということではなく、むしろ、怒りを覚えた相手であっても、怒りなしで応じることができるということだろう。

 「わたしは正しい。すなわち相手は間違っている。そう思った時点で、議論の焦点は『主張の正しさ』から『対人関係のあり方』に移ってしまいます」「あなたが正しいと思うのなら、他の人がどんな意見であれ、そこで完結するべき話です」(p.107)。

 なるほど。相手を自分の意見に賛成させようとする、つまり、屈服させようとするから、けれども、相手がそれに応じないことに苛立つから、怒りで返してしまうのだろう。

 「他者もまた『あなたの期待を満たすために生きているのではない』のです」(p.136)。

 たしかに、他者から「そうね」「いいね」と言われることを期待してしまっているなあ。

 「勉強することは子どもの課題です・・・われわれは『これは誰の課題なのか?』という視点から、自分の課題と他者の課題とを分離していく必要があるのです」「他者の課題には踏み込まない。それだけです」(p.140)。

 さきの話で言えば、自分の意見を自分が正しいと思うことは自分の課題だが、相手がそれを認めるのは相手の課題であって、そこに踏み込むこともできなければ、踏み込む必要もないのだ。

 ただし、このような課題の分離は、たとえば、子どもに対して没交渉になることではなく、むしろ、子どもが自分の課題に自分で立ち向かえる自信、あるいは、勇気をあたえることが大切だ。

 その根底には、「ありのままのわが子を誰とも比べることなく、ありのままに見て、そこにいてくれることを喜び、感謝していく」(p.211)姿勢が必要だ。変わらせよう、何かをさせようとすれば、課題の混同になってしまう。

 では、自分の課題についてはどうするか。

 「たとえばバイオリニストになることを夢見た人は、いつも目の前の楽曲だけを見て、この一曲、この一小節、この一音だけに集中していたのではないでしょうか」「人生とは、いまこの瞬間をくるくるとダンスするように生きる、連続する刹那なのです」(p.266)。

https://www.amazon.co.jp/%E5%AB%8C%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%82%8B%E5%8B%87%E6%B0%97%E2%80%95%E2%80%95%E2%80%95%E8%87%AA%E5%B7%B1%E5%95%93%E7%99%BA%E3%81%AE%E6%BA%90%E6%B5%81%E3%80%8C%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%95%99%E3%81%88-%E5%B2%B8%E8%A6%8B-%E4%B8%80%E9%83%8E/dp/4478025819/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1517203310&sr=1-1&keywords=%E5%AB%8C%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%82%8B%E5%8B%87%E6%B0%97