2012-01-01から1年間の記事一覧

53 「あの『してあげる』からの卒業」

「子どもの心を救う親の『ひと言』」(諸富祥彦、青春出版社、2011年10月5日) 題名とはうらはらに「『何か、気の利いたひと言を言ってあげよう』とする親御さんの姿勢は、マイナスにしかならないことの方が多い」(p.214)と、著者はまっとうなことを述べてい…

54 「ヨハネ福音書を全く違う角度から、新鮮に読む」

「ヨハネ福音書の特質 旧約から新約へ」(大河原礼三著、教友社、2012年2月8日) 著者の大河原さんは、非権力的、平等的な生き方を、行動においても、思想においても、貫こうとして来た方だと思います。 本書の前半には、旧約思想のうち、預言者的メッセージ…

52 「自然エネルギーは・・・地域分散・分権型の、人が自然と戯れ共存するための技術」

「東北の震災と想像力――われわれは何を負わされたのか」(鷲田清一・赤坂憲雄、講談社、2012年3月8日) かつて王のイメージからナウシカを論じ(「王と天皇」筑摩書房、1988年)、去年「3.11を心に刻んで」(岩波書店)のためには『風の谷のナウシ…

51 「人間には・・・海の底のような深みがある」

「科学と宗教と死」(加賀乙彦、集英社新書、700円、2012年1月22日) 帯には「医師として、作家として、そして信仰の徒として「死」をめぐる思索の集大成」とありますが、じっさいは、加賀さんのライフヒストリーに沿って、ということは、体験談を交えながら…

50 「〈大震災に負けない日本人の勇気〉をオウム返しに言うより」

「瓦礫の中から言葉を わたしの〈死者〉へ」(辺見庸、NHK出版、740円、2012年1月10日) 「あの人は良い人だった」「あの人も幸せだったんじゃないの」「良い人生だった」「苦しまなくて良かった」「苦しんだけれども良くがんばった」「今ごろは苦しみのない…

49 「根本的には他者によって開かれる自己認識」

「信仰と経験 イエスと〈神の王国〉の福音」(廣石望、新教出版社、2700円、2011年11月30日) 講演を収録したものとのことですが、かなり難しい本でした。 たとえば、「イエス・キリストとは、わたしの人生に外側から与えられるリアリティであると同時に、信…

48 「軍国主義、原発主義、不敗神話、安全神話、そして破綻」

「犠牲のシステム 福島・沖縄」(高橋哲哉、集英社新書、740円、2012年1月22日) 福島の人びとは、日本国家のエネルギー政策、そこから利益を得る人々、東京電力、東京電力からの電力によって快適な生活をする消費者、都市住民の犠牲となって、町や土地や共…

(41)「おのおのをお召しになったとき」

7:13-17 7:17ただ、おのおのが、主からいただいた分に応じ、また神がおのおのをお召しになったときのままの状態で歩むべきです。私は、すべての教会で、このように指導しています。 わたしたちは、苦しみや痛みの中で神さまと出会いました。いや、出会いがか…

47 「公正無私で、いつもなにか静かに考えている」

「一分の一 (上)(下)」 井上ひさし 一昨年に帰天した著者の未完の長編小説。どうして、未完なのでしょうか。 敗戦後、日本は四分割され、北ニッポンはソ連に、中央ニッポンは米国に、沖縄を含む西日本は英国に、四国ニッポンは中華人民共和国に占領され…

46 〈 「 」+「 」=「 」 〉

「ソーシャルデザイン 社会をつくるグッドアイデア集」 グリーンズ編 タイトルを見て買いました。経済格差をどう緩和するか、雇用機会不均等をどう是正するか、そのために、共同体でどのような方法でどのような質の合意を形成するのか、また、どのような理念…

45 「沖縄が、既成の「了解」へと「回収」されることを拒む」

「沖縄の戦後思想を考える」 鹿野政直 「ちゅらさん」(NHKの朝ドラ)や「ナビィの恋」(映画:「ちゅらさん」のおばあを演じる平良とみさんが主演)を見て、沖縄の人やそこで結われるものに、「癒し」や「優しさ」や「ユートピア」を覚えたことを、告白しな…

(40)「信者でない妻」

7:12次に、そのほかの人々に言いますが、これを言うのは主ではなく、私です。信者の男子に信者でない妻があり、その妻がいっしょにいることを承知しているばあいは、離婚してはいけません。 自分はキリストを信じているが、夫や妻はそうではない、という方は…

(39)「情の燃えるよりは」

7:9しかし、もし自制することができなければ、結婚しなさい。情の燃えるよりは、結婚するほうがよいからです。 この言葉は「結婚していない男とやもめの女」(8節)に向けられています。パウロもそのような男性の一人です。そして、パウロは「男が女に触れな…

(38)「人それぞれに行き方が」

7:7私の願うところは、すべての人が私のようであることです。しかし、ひとりひとり神から与えられたそれぞれの賜物を持っているので、人それぞれに行き方があります。 パウロは自分の願望を持っています。皆が自分と同じように独身であった方が良いという思…

[「一つの部分が苦しめば」(一コリントを読む)(36)「聖霊の宮」  

6:19-20 6:19あなたがたのからだは、あなたがたのうちに住まれる、神から受けた聖霊の宮であり、あなたがたは、もはや自分自身のものではないことを、知らないのですか。 わたしたちは自分のからだを自分自身のものであり、「すべてのことが許されている」(…

44「休養も『がんばる』一部だ」

「復興の道なかばで 阪神淡路大震災一年の記録」 中井久夫 「日本の機械には『使う快感がない』」(p.173)と中井さんは述べます。本書は、1996年の出版物に収められた一連の文章に、2011年に書き下ろした一文を添えたものですが、そのあとがきで、福…

(35) 「私たちをもよみがえらせて」 

6:14-18 6:14神は主をよみがえらせましたが、その御力によって私たちをもよみがえらせてくださいます。 この節の直前の13節には「からだは不品行のためにあるのではなく」とあり、直後の15節には「あなたがたのからだはキリストの体の一部である」とあります…

「旧約聖書と新約聖書―――「聖書」とはなにか」(上村静さん)の読書会を開きます。

毎月 第二月曜日の午後2時から4時まで、日本基督教団蒲田教会にて。参加無料。初回は、2月13日 午後2時。23頁までを読んできてください。初回ですから、自己紹介や読書会の進め方、この本の全体的なことなどを話しあいましょう。参加ご予定の方はibuho@…

43「相対にして肯定されてある人間存在」

「旧約聖書と新約聖書―――「聖書」とはなにか」(上村静) 大きなスパンで物事を考えるとはこういうことか、と教えられました。創世記から黙示録までが、たんなる緒論的羅列ではなく、一つの視点から、論理的かつ文献的な裏付けをもって、批判的に(非難では…

(34)「すべてが益になるわけでは」

6:12-13 6:12すべてのことが私には許されたことです。しかし、すべてが益になるわけではありません。私にはすべてのことが許されています。しかし、私はどんなことにも支配されはしません。 パウロは11節で「主イエス・キリストの御名と私たちの神の御霊によ…