45 「沖縄が、既成の「了解」へと「回収」されることを拒む」

「沖縄の戦後思想を考える」 鹿野政直

 「ちゅらさん」(NHKの朝ドラ)や「ナビィの恋」(映画:「ちゅらさん」のおばあを演じる平良とみさんが主演)を見て、沖縄の人やそこで結われるものに、「癒し」や「優しさ」や「ユートピア」を覚えたことを、告白しなければなりません。

 また、沖縄には古来から、人が人を支配せず、助け合って生きていくような民衆思想のようなものがあるように思っていたこともありました。

 あるいは、「戦後思想」というタイトルから、沖縄発の思想にも、商品化された「現代思想」のようなものがあるような気もしていました。

 けれども、この本によってこうした誤解はことごとく打ち消されました。

 「沖縄の戦後思想」は学知や商業知による商品ではなく、米軍・日本軍によって四分の一の人びとを殺され、米軍・米国に支配・占領・略奪され、日本国によって売られ、捨てられ、取引の材料にされ、多くの大切な命が損なわれて来た半世紀以上の歴史と現実に向かい合う中から、絞り出されてきた果汁のことなのです。

 戦後だけに限らず、沖縄の人びとは、支配者の抑圧に立ち向かう中で思想を生み出してきたのだと思います。南波照間島の伝説も、のどかな癒し系の人びとではなく、権力者の横暴に「回収」されない人びとが産み出したものではないでしょうか。

 鹿野政直さんは、近代日本の反権力思想の研究者で、この本は法政大学沖縄文化研究所での講演を起こしたもので、読みやすいと思います。