2020-01-01から1年間の記事一覧
ぼくは、高校生の時、日本史や世界史より倫理社会や政治経済の方が好きだった。だから、世界史がわかっていない。それは、キリスト教史を学ぶ基礎ができていない、ということでもある。だから、ぼくは、キリスト教史の本を読むときは、大学入試基礎レベルの…
キリスト教の聖書とドイツの政治理念には共通点があるとメルケルは述べます。すなわち、創世記によれば「人間は神の似姿として、神によって創られ、自由に生きるべく召されている」(p.96)のであり、ドイツ基本法第一条によれば「人間の尊厳は不可侵である」…
七、八年前でしょうか。初めて読んだ若松さんの本に、「死者」という言葉がありました。ぼくは、それは、「他者」のことだと思いました。「他人」ではありません。深い愛を感じつつも、自分の中に取り込んで自分の良いように決めつけてしまわず、むしろ、自…
井上ひさしさんは死んだので、戯曲や小説はもう出ないけれども、本書のような出版のおかげで、文字通り「『井上ひさし』を読む」ことが続けられます。 しかも、小森陽一、大江健三郎、辻井喬、平田オリザ、ノーマ・フィールド、そして、井上ひさし自身、とい…
「世界は心的外傷に満ちている。“心の傷を癒すということ”は、精神医学や心理学に任せてすむことではない。それは社会のあり方として、今を生きる私たち全員に問われていることなのである」(p.258)。 心に傷害を負った三十年前、ぼくは、一方では、自分の心…
イエスは、血縁に関係なく、人びととともに旅をしたり、食事をしたりしていました。晴佐久神父の言う「福音家族」も、血縁に関係なく、ともに食事をする共同体です。そこには、イエスから受け継いだ「無期限のつながり」「無償の分かち合い」「無条件の助け…
詩人はキリスト者でした。 「もう先に来て 祈っている人がある わたしもすわって 聖書を開く」(「教会への道」、p.159) 詩人は、野の花に神の営みを見たイエスの弟子でした。 「庭さきの花は 天と地をつなぐ 自然の微笑」(「花」、p.169) 詩人は、イエス…
詩人の生まれるひと月前に、父は、「心をおだやかに」と母とお腹の子のために、祈ってくれたと言います。「その祈りはおだやかとものどかとも云えぬ私の一生をいつもフットライトのように見えぬ角度から照射していたのにちがいなく」(p.118)。祈りとは、叶わ…
「生かされている」と言います。わたしたちは、自分一人の力で生きているのではなく、誰かによって、何かによって、生かされています。まわりの人びとに支えられています。あるいは、たとえば、会ったことはないけれども農業漁業で食をもたらしてくれる人び…
「何かを相手にうまく伝える方法」。もしこれがこの本のタイトルだったら、あまり売れないだでしょう。 「説明」を「力」と位置づけ、「頭のよさ」と等置する。しかも簡潔に言い切る。そうすれば、すぐに相手の気持ちを引き付けます。 この本が教えてくれる…
誤読ノート505 「過去も現在も未来も、唯一のものではなく、様々な可能性がある」 「テセウスの船」(東元俊哉、講談社、2019年) テレビドラマの原作になったコミック。 ギリシャ神話にこうある。テセウスの船は部品を変えながら長く保存された。ある時点で…
少数民族、先住民を踏みにじってはならない。軽蔑してもならない。 この民は劣っているのでもなければ遅れているのでもない。「未開」なのでもない。「人間」(ギリヤークの言葉では「ニグブン」、アイヌの言葉では「アイヌ」)だ。「同じ人間」なのではない…
自分を閉じ込める高い壁を越えるにはどうしたらよいのだろうか。 異国の地で囚われの身となった青年が祖国へと解放されるにはどうしたらよいのだろうか。 尹東柱。ユン ドンジュ。留学先の日本で、治安維持法違反で投獄され、拷問され、殺された。詩を愛した…
そもそも、「頭が良い」とか「良くない」とか、言わなければならないのだろうか。「本当の」って、何だろうか。「本当の」とか「本当でない」とか、言わなければならないのだろうか。 この本によれば、「本当の『頭の良さ』」とは、以下のようなものだそうだ…
この本には、若松さんが選んだ、さまざまな詩人のさまざまな詩が引用されています。どれも美しい詩ばかりです。その意味では、この本は若松さんの詞華集です。 それらの詩には、若松さん自身の言葉が添えられていますが、それは歴史的背景や文学技法の説明で…
目に見えない神など信じないから「信仰」などという言葉には興味がない、という人は少なくないことでしょう。ましてや、「神学」などというものは、ありもしないものをあるという屁理屈に過ぎない、と思われているかもしれません。 けれども、著者は、「信仰…