自分を閉じ込める高い壁を越えるにはどうしたらよいのだろうか。
異国の地で囚われの身となった青年が祖国へと解放されるにはどうしたらよいのだろうか。
尹東柱。ユン ドンジュ。留学先の日本で、治安維持法違反で投獄され、拷問され、殺された。詩を愛したが、一冊の詩集を出すこともなく。
それにもかかわらず、彼は、韓国の国民的詩人となった。どうやって。
どうやって、彼の言葉は、塀を越えたのか。虐待される者たちの魂は、いかにして、星をかすめるのか。
詩人、小説家、劇作家、宗教者、教師、親、友、仲間・・・言葉を紡ぐことは、十メートルの塀の内側から凧を揚げることに親しい。
張り裂けそうに苦しくても、サハラ砂漠に針葉樹林を求めるくらいに希望が見えなくても、風に乗った言葉は天を目指す。どこかの、誰かに届く。
だから、ぼくたちは、言葉を侮辱してはならない。
言葉を愛し、言葉を信じなくてはならない。