2019-01-01から1年間の記事一覧

468 「被差別者の現実から聖書を読みなおす」

「『新』キリスト教入門(1)」(新免貢、 燦葉出版社、2019年) キリスト教の一般的な入門書には、聖書に書かれていることの概要、キリスト教史の大まかな流れなどが記されていますが、本書は、まったく違います。 たしかに聖書が何箇所か引用されてはいます…

467 「世界の深奥とわたしたちの奥底にある創造の場」

467 「世界の深奥とわたしたちの奥底にある創造の場」 「創造的空への道 統合・信・瞑想」(八木誠一、 ぷねうま舎、2018年) たとえば、今のぼくの頭の中には、子どもにはこうさせてこうならせたい、これこれこのような手段を用いてこれこれこのような仕事…

466 「体を動かすのが体操、霊を動かすのが霊操」

「霊操」(イグナチオ・デ・ロヨラ、 門脇佳吉訳、岩波文庫、1995年) 体操が体を動かすことであるなら、霊操は霊を動かすことでしょう。 具体的には、たとえば、聖書に出てくるイエスの各場面(・・・誕生、弟子の招き、病人の癒し、嵐を静める、苦しみ、十…

465 「もう一度、あの人と。もう一度、教会へ」

「アンの友達 赤毛のアン・シリーズ4」(モンゴメリ、村岡花子訳、新潮文庫、2008年) ひとは、いちど離れてしまったものと、どのようにつきあっていくのでしょうか。 たとえば、故郷と。たとえば、教会と。恋人と。家族と。 アンのシリーズ。第四巻。アンは…

464 「詩人は、庭となり、木となり、青空を想いだす」・・・・・「原民喜全詩集」(岩波文庫、2015年)

誤読ノート464 「詩人は、庭となり、木となり、青空を想いだす」 「原民喜全詩集」(岩波文庫、2015年) 十代で姉を亡くし、三十手前でつれあいを亡くし、三十九才で広島で被爆、四十五才で鉄道で死んだ原民喜の詩集。 詩人の系譜がそうであるように、原もま…

463 「地に足の着いた、それでいて珠玉の言葉ファイル」・・・「希望する力:生き方を問う聖書」(佐原光児、新教出版社、2019年)

誤読ノート463 「地に足の着いた、それでいて珠玉の言葉ファイル」 「希望する力:生き方を問う聖書」(佐原光児、新教出版社、2019年) この本の書名にも含まれているが、「聖書」などという言葉を耳にすると、神がいるとかいないとか、こうすると神はこう…

462 「重松版『放蕩息子のたとえ』」・・・「木曜日の子ども」(重松清、角川書店、2019年)

誤読ノート462 「重松版『放蕩息子のたとえ』」 「木曜日の子ども」(重松清、角川書店、2019年) 結婚相手には14歳の少年がいた。手探りで父親になろうとする「私」。丸い笑顔をし、言葉もやわらかな少年。けれども、父は「息子」を「くん」づけなしでは呼…

461 「キリスト教の主要テーマの数々が、難しくではなく、深く掘り下げられている対談」・・・「キリスト教講義」(若松英輔、山本芳久、文藝春秋、2018年)

誤読ノート461 「キリスト教の主要テーマの数々が、難しくではなく、深く掘り下げられている対談」 「キリスト教講義」(若松英輔、山本芳久、文藝春秋、2018年) プロテスタントとしてぼくが長年慣れ親しんできた考えを、カトリックの山本さんの言葉は心地…

460 「沖縄のミステリー:悪霊と死者、日米と沖縄、ヤマトンチュ・アメリカーとウチナーンチュ」   「宝島」(真藤順丈、講談社、2018年)

「この網の目からは、農作物を荒らすイナゴの大群のように悪いもの(ヤナムン)が湧きだしてきて、島の暮らしのひだにまではびりこり、平穏を脅かして、島民たちの魂すらも蝕んでしまう」(p.344)。 基地の金網から、悪霊がつぎつぎと飛び出していく。けれど…

459 「牧師よ、町を出て、森を分け入り、湖の真ん中へ漕ぎ出そう」  「ソロー『森の生活』を漫画で読む」(ヘンリー・デイヴィッド・ソロー (著), ジョン・ポーセリノ (著), 金原瑞人 (翻訳)、いそっぷ社 、2018年)

役所でも働けない、牧師にもなれない。だから、ソローは「町よりずっと懐の広い森と向き合うことにした」。ぼくは四半世紀以上、牧師として町に生きてきた。そろそろ、森に向かうときかも知れない。この本にはかなり誘惑される。 「神をわがものと思っている…

458 「大人が読めば、死ぬことが少し怖くなくなるかも知れません」 「最後の戦い (ナルニア国物語7)」(C. S. ルイス著、土屋京子訳、光文社古典新訳文庫、2018年)

「ライオンが魔女たちに殺される場面には、涙が出る」。好きだった同級生に教えられて、英語のペーパーバックで、辞書も引かずに、ひたすら筋だけを追いかけ、頁をめくり続けた。その三十余年後、シリーズの新訳登場を機に読み返し始め、この度、全巻読了。 …

457 「差別者の烙印を額に掲げた哲学者」   「チュサンマとピウスツキとトミの物語 他」(花崎皋平著、未知谷発行、2018年)

チュサンマは樺太アイヌ女性。ピウスツキはリトワニア生まれの男性。19世紀末、ロシアにより南サハリンに派遣され、チュサンマと出会い、20世紀頭に結婚。ここから、この長詩は始まります。 トミは1940年クナシリ生まれのアイヌ女性。やがて、著者と出会う。…