「ライオンが魔女たちに殺される場面には、涙が出る」。好きだった同級生に教えられて、英語のペーパーバックで、辞書も引かずに、ひたすら筋だけを追いかけ、頁をめくり続けた。その三十余年後、シリーズの新訳登場を機に読み返し始め、この度、全巻読了。
子どもたちにこのようなことが起こったとは! 巻末で、驚き、動揺し、どういうことだろうと、頁をあちこち、めくり返して見たりもした。
(以下、子どもたちに何があったか、わかってしまうかもしれません・・・)
聖書が伝えるメッセージを、ルイスは、ナルニア国物語でとてもゆたかに描きなおしていると言っても、そんなに的外れではないでしょう。むろん、こじつけやキリスト教の押し付けはありませんが。
アスランという名の大きなライオンは「イエス・キリスト」、魔女に殺される場面は「十字架」、そして、「復活」。「ライオンと魔女」の巻は、容易にこのように読み解くことができます。
本巻は、キリスト教の用語を使ってしまえば、「この世界の終わりと完成」(・・・「終末」「終末論」などとも言います・・・)ということでしょう。
そして、それは、「わたしたちのこの世での人生の終わりとその後」のことにも重なります。しかし、それは、「この世」から「あの世」の生活へという浅薄なものではなく、世界の根源とは何なのか、わたしたちは根本的にはどのような存在なのかという問いへのルイスの答えなのです。
人と世界は神によって創造され、神のもとに帰って行く。けれども、それは消滅ではなく、終わりでもなく、完成であり、永遠であることを、ルイスは、ある意味聖書以上に、いきいきと、子どもたちとわたしたちの前に描き出すことに成功したと言えるかも知れません。