464 「詩人は、庭となり、木となり、青空を想いだす」・・・・・「原民喜全詩集」(岩波文庫、2015年)

誤読ノート464 「詩人は、庭となり、木となり、青空を想いだす」

 

原民喜全詩集」(岩波文庫、2015年)

 

 十代で姉を亡くし、三十手前でつれあいを亡くし、三十九才で広島で被爆、四十五才で鉄道で死んだ原民喜の詩集。

 

 詩人の系譜がそうであるように、原もまた、宙に身を重ねた。

 

「雨の降つてゐる庭がそのまゝ私の魂となってゐるやうな、ふしぎな時であった。私はうつうつと祈ってゐるのだつた」(p.13)。

 

 原もまた、木となり、天を見上げた。

 

「網の目をなして空にひろがる梢の、かなたにのびてゆくものがある。かすかにそれをみとどけねばならぬ」(p.20)。

 原もまた、天を信じた。

 

「私の頭上に青空があることさへ忘れ、はしたない歳月を迷った。けれども雲はやつぱし絶えず流れつづけてゐた。そして今、私が再び雲に見入れば、雲は昔ながらの、雲のつづきだ」(p.136)。

 

https://www.amazon.co.jp/%E5%8E%9F%E6%B0%91%E5%96%9C%E5%85%A8%E8%A9%A9%E9%9B%86-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%8E%9F-%E6%B0%91%E5%96%9C/dp/400311082X/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1552537711&sr=8-1&keywords=%E5%8E%9F%E6%B0%91%E5%96%9C%E3%80%80%E5%85%A8%E8%A9%A9%E9%9B%86