552 「即答して孤独から逃げず、問い続け世界を耕す」・・・「若き詩人への手紙 若き女性への手紙」(リルケ、高安国世訳、新潮文庫)

 訳者によれば、リルケは「実りない孤独を、豊穣な孤独にまで持ち上げ」「死を単なる死滅、消滅の意味から、われわれの生に意義あらしめる強大な力にまで高めた」(p.110)詩人です。

 

 リルケは若き詩人に言います。「あなたの孤独を愛してください。そして、孤独が美しい嘆きの声を響かせながらあなたに味わわせた苦痛をになってください」(p.33)。

 孤独とは距離です。人との遠さです。しかし、それはその人の成長であり、三人がたがいに遠くあれば、そこに描かれる三角形はとても大きいのです。

 孤独とは時間です。瞬時ではなく時間が人を生かします。「今すぐ答えを捜さないで下さい…今はあなたは問いを生きて下さい」(p.29)。

 今すぐ答えを出してしまえば、三角形は点とかわらず、問いを生きることができません。詩でも、論文でも、牧師の説教でも、神との対話でも、答えを出さす問い続ける孤独こそが、それを掘り下げるのです。

 掘り下げる先には何が待っているのでしょうか。「自らの内へおはいりなさい。そしてあなたの生命が湧き出てくるところの深い底をおさぐりなさい」(p.16)。

 問いながら掘り下げていく孤独の真底にこそ、生命の源泉があります。神との出会いがあります。

 

 どうしたら、孤独を掘り下げることができるのでしょうか。黙想もひとつの道でしょう。しかし、黙想が苦手な人、集中できない人、すぐに雑念が湧いてくる人には、読書という道もあるでしょう。

 ひとり静かに本を読むとき、問いが湧いてきて、つぎつぎの問いに導かれ自分の深いところまで降りていきます。書物は、著者との対話ですが、読書は、それを通して、わたしたちをゆたかな孤独へと導いてくれるのです。

 

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