550 「人と自然を貧困と異常気象から守るために」・・・「NHK 100分 de 名著 カール・マルクス『資本論』」(斎藤幸平、NHK出版、2020年)

 とても読みやすい。とてもわかりやすい。

 

 年収1000万を超える人もいれば100万に満たない人もいる。他方、夏が異常に暑くなったり、経験したことのないような大雨が降ったり、パンデミックが起ったりして苦しんでいる人びとがたくさんいる。

 

 マルクス!とか資本論!とかいうと難しそうな気がするが、この本は「資本論」解題の学術書ではなく、貧富の格差の原因をとてもわかりやすく説明している。また、この問題は人間と自然との関係にもつながっていることを指摘している。

 

 「マルクスは、自然の『持続可能性』と、人間社会における『平等』の連関に気づいていきます。つまり、平等な社会を作るには、同時に持続可能な社会を築いていかなければならない・・・富が偏在すれば、そこに権力関係が生じ、それを利用した人間や自然からの略奪が始まってしまう」(p.114)。

 

 わたしたちが今直面している異常気象の一因は、権力者による自然の略奪にある、と著者は言う。

 

 権力にも勝てないし、自然にも勝てない。では、わたしたちは無力なのか。

 

 「マルクスが注目していた原古的共同体は、『持続的可能性』と『平等』を両立させることができていた」(同)。

 

 著者は本気だ。「資本主義から脱却する必要がある」(p.8)。

 

 しかし、著者は社会主義国化、共産主義国化を考えているのではなく、貧困や自然破壊で苦しむ人びとを救うには、そのような人びとが現れないためには、つまり、人と自然の命を守るには、どうしたらよいのか、そういう問題と取り組みの手掛かりを提起しているのではないか。

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