誤読ノート162 「子どもはさっきまで天使だった。老人はまもなく天使になる。」

 「カールじいさんの空飛ぶ家」(ディズニーアニメ映画、2009年)

 子どもの気持ちに弱い。悲しかったり、寂しかったり、歯を食いしばったり、うれしがったりする子どもの心が伝わってくると、涙が出そうになる。ラストシーンは歯を食いしばらなければならなかった。

 幼いころからが互いに冒険好きで、それを絆に結ばれた夫婦。子どもは生まれず、やがて老い、妻が先立つ。あたりには高層ビルが立ち並び、立ち退きを迫られる。

 妻との人生が刻まれた家。短編アニメ「積み木の家」では、古い家は水の中に沈み、その上にあたらしい家が建てられ、それもまた沈み、またその上に、と重なり続けた家を、現在、つまり、水面にある一番高い所から下に潜って行くのだが(底まで降りたら、また水面に上がってきたけど・・・)、この映画は、妻との家が、大地から空へと昇って行くのだ。

 家が浮かぶ直前に迷い込んできた少年。この子も少年上級探検員に憧れるが、それにはあとひとつバッチが足りない。そこには、子どもには、軽くない事情が。

 高齢者と子ども。20世紀末から、小中学校とデイケアを同じ敷地に設置するなどの試みがあると聞いているが。

 老人と子どもの接点って何だろう。子どもはまだ多くを持っていないから、はずんだり、浮いたり、跳んだりしやすい。老人も、ひとつまたひとつ、家の外に引きずり出してしまえば、飛ぶことができる。

 子どもはさっきまで天使だった。老人はまもなく天使になる。

 五十代半ばに差し掛かるぼくが、ちょっと前まで十代でもなかった子どもたちと冬休みに、我が家のリビングで観た一作。この家も空を飛んでいるかな。
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