690  「わたしは詩情を呼び覚まし、人間は詩の一語を刻まねばならない」・・・ 「詩集 美しいとき」(若松英輔、亜紀書房、2022年)

 「私は わたしに/生まれたのだから/必死になって わたしに/ならなくてはならない」(「私がわたしに出会う旅」、p.6)。

 

 「私」と「わたし」はどう違うのだろうか。

 

 「優れた/人材になる前に/まず/人間に/ならねばならない」(「禁忌」、p.89)。

 

 「人材」と「人間」はどう違うのだろうか。「私」は「人材」であり、「わたし」は「人間」なのだろうか。

 

 そのままでよい、ねばならないと言わない方がよい、と言われる時代にあえて発せられる「ならない」とは何なのだろうか。

 

 「詩を/つむがねばならない/言葉を 失いそうになる/悲しみの前で」

 「胸に詩情を/呼び覚まさねばならない/人々が語るのを/止めそうになる場所で」

 「詩の一語を/刻まねばならない/このおもいは言葉にならない/世の人が そう感じた時に」(「詩を書く理由」、p.72~73)。

 

 「おもい」は容易には「言葉」にはならない。すぐに出てくるものは、とりあえずの発音に過ぎない。

 

 「私」/「人材」は「発音」が得意で、「わたし」/「人間」は「詩」の「言葉」を待つ。

 

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