女の子は十代。父親の仕事を手伝ったりもするが、恋もする。ところがある日、大きな試練に見舞われる。
父親は小さな教会の貧乏牧師。牧師職だけでは食べていけないので、ガソリンスタンドでアルバイトをしている。
ぼくも牧師をしながら非常勤教員もしているので、どんな話なのか、牧師の生活がどれだけリアルに描かれているのか、興味をもって、手にしてみた。
「牧師の収入は信徒からの献金が主だ。毎月頂く月定献金と礼拝で集める礼拝献金である。この他の収入源は、一男の場合、結婚式や葬儀の謝礼のみだった」(p.4)。
すこし違う。プロテスタント教会の多くでは、牧師は献金を直接自分の収入として受け取るのではない。献金は教会の会計に入れられる。そこから、水光熱費、事務通信費、事業費などとあわせて、牧師給が支給される。
「評判の教会へいくつか足を運んだこともある。低音の渋い声で、どんな内容でも説得力のある牧師・・・落語家のように流ちょうなおしゃべりで、最初から最後まで信徒の笑いが途絶えない牧師・・・教壇に立っただけで、教会ぜんたいに荘厳な雰囲気が漂う牧師」(p.10)。
表現力乏しく原稿を読むぼくが評判にならないのは、こういうことかな。
「ぼくも人間関係で悩むことがあります」「どんな人間関係です?」「牧師同士ですよ」(p.19)。
あるある笑。良く取材しているね。そして、教会に来る人びととの関係で悩む牧師も少なくないと思いますよ。基本は、相手に聴こう、尊重しよう、ということだから。
物語は、イエス誕生のクリスマスと、イエス復活のイースターのモチーフを、活かそうとしたのかもしれない。
映画ではムロツヨシが牧師を演じる。たぶん女の子のセリフに泣かされる。
帯には「映画原作」とあるが、巻末には「本書は映画『マイ・ダディ』の小説本として書き下ろされました」とあるから、映画の脚本が先にあったのではなかろうか。