238 「社会人、職業人としての心がけ」

「人に強くなる極意」(佐藤優、2013年、青春出版社

 「人に強くなる」「極意」というよりは、「社会人、職業人として、しっかり生きていくための」「心がけ」といった内容だと思います。

 それを「怒らない」「びびらない」「飾らない」「侮らない」「断らない」「お金に振り回されない」「あきらめない」の六つの切り口から、外務省、ロシア、起訴、拘置所、学生時代の経験などを交えて述べた、語りかけ調子の、どんどん読める一冊です。

 参考になったことをいくつか挙げましょう。

「飾らない」とは、自分のすべてを見せることではない、そんなことをすればかえって関係が悪くなりかねない、むしろ、相手に対し誠実に真剣に臨み、虚偽を交えないことが肝心だということ。ぼくは、自分を露出し過ぎていたと反省しました。

 大組織には個人では勝てない。しかし、ほぼ引き分けに持ち込むことなら可能だということ。なるほど。勝ちを求めすぎていたかも知れません。大きな相手なら引き分けでも、大健闘ですね。

 文章は焦ってすぐに書き始めるより、ある程度頭の中に情報を寝かせておいて、締め切り直前に集中して書いた方がよくなる確率が高いということ。これは、心配性なぼくには難しいですね。しかし、書き始める前の「寝かせる」期間が大切だとは思います。

 それから、マルクスを引き合いにして、今、そしてこれからの賃金は、マルクスが考えた賃金の諸要素(レジャー費、教育費など)をどんどん削られ、日雇い派遣のようになっているという認識を持っていたり、アベノミクスを信頼していなかったり、精神論の上司を持ったら大変だと述べてみたり、現代日本のいくつかのキーポイントにも触れています。

 それに、連載ひとつき6本、原稿用紙にして1000枚というような、佐藤優異能鬼才神話も盛り込まれています。

 まあ、五十代の親父が二十代の若者に語っているという感じです。

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