「現代信仰問答」(ボンヘッファー著、森野善右衛門訳、1961年、新教出版社)
1930年代、ナチスが台頭し、ヒットラーが君臨していくドイツで書かれた信仰問答。ルター派の信仰、神学をじゅうぶんに踏まえながらも、その時代を反映していると思われる記述も目立ちます。そして、それが現代にそのまま通じます。
たとえば、「教会は、戦争の聖性については何事も知りません。戦争の際には、非人間的な武器を用いて、生存をかけた戦いが行われます。主の祈りを祈る教会は、神にただ平和をのみ呼び求めます」。「肉と血とによりたのもうとする民族的傲慢は、聖霊にさからう罪」。「良心に反するような国家の命令に従うべきか」どれもみな80年前のドイツにだけ当てはまる言葉ではありません。
「キリストを抜きにした、恐怖あるいは幻想が人間の宗教を支配しているところ、聖霊はキリスト教界を恵みと真実とに導きます」。ヒトラーを頂点とする「偽りの」(「誤りの」ではない)教会は現代日本にも存在します。
「すべての英雄は人間であり、しかも神のごとくなろうとします。キリストは、神であり、しかも人間となろうとされます」。現代の政治家にも宗教家にも神のごとくふるまう人がいます。それに隷従する者も、蹂躙される人びともいます。
「イエスは、悪魔の上に立つ主、死の上に立つ主、自然の上に立つ主」。この世の暴君がいかにのさばろうとも、その上に立つお方がおられます。
暴君、独裁者が神のように振る舞い、人びとがますます軍隊に殺される現代において、聖書の神とイエスを主と仰ぐわたしたちに、根本的な信仰と神学を示してくれます。