2024-10-01から1ヶ月間の記事一覧

830 「セクシュアリティをめぐるキリスト教界の議論の大まかな流れ」・・・「現代エキュメニカル運動史: ジェンダー正義の視点から読み解く」(藤原佐和子、2024年、新教出版社)

本書は、WCC(世界キリスト教協議会)関連の文書を中心に、セクシュアリティをめぐる議論の大まかな流れを示しています。人間社会では「性は男性と女性に二分され、異性愛が『正常』であり、それ以外のセクシュアリティ(たとえば、中性、トランスジェンダー…

829 「哲学や入門も不要ではないだろうが・・・」・・・「差別の哲学入門」(池田喬、 堀田義太郎、2021年、アルパカ)

差別とは何でしょうか。著者は、性別や人種に基づいて人々の間に区別をつけることと、試験の得点やくじ引きやジャンケンで区別することは、どこか違う、と言います。「差別とは、人々の間に何らかの特徴に基づいて区別をつけ、その一方にのみ不利益を与える…

828 「イザヤは21世紀の日本と世界でどのように預言するでしょうか」 ・・・ 「イザヤ書を読もう 上 ここに私がおります」(大島力、2024年、日本キリスト教団出版局)

ぼくたちは、イザヤ書ってだいたいどんなことが書かれているのか、知りたいと、なんとなく憧れているのですが、本書で大島先生はそれをとてもわかりやすく述べてくださっています。 ところで、聖書の中心メッセージは、インマヌエル(神は私達と共にいる)、…

827 「若松さんが読み、書く。ぼくがそれを読み、書く」・・・「探していたのはどこにでもある小さな一つの言葉だった」(若松英輔、2024年、亜紀書房)

「読むと書く」。若松さんの公式ホームページはこう名付けられている。 本書でも、「読むと書く」が、書かれ、読まれる。 ぼくの生活も、本を読み、書くことである。読んだ本の「誤読ノート」を書く。 もうひとつは、聖書を読み、そこから人に語ることを書く…

826 「近親憎悪、自分の不遇の犯人捜し、優越感依存」 ・・・「「いじめ」や「差別」をなくすためにできること」(香山リカ、2017年、ちくまプリマー新書)

わたしたち人間はなぜ人を差別するのか、その諸説を知る一環で、この本も手にしてみました。 「人は「自分に似ていて少しだけ違う人」が気になり、場合によってはその人を攻撃して追い出そうとしたり、逆に「そんな人はいないんだ」と否定しようとしたりして…

825 「言われたとおりにしない方が、新しいことができる」 ・・・「体はゆく できるを科学する〈テクノロジー×身体〉」(伊藤亜紗、2022年、文藝春秋)

副題の「できるを科学する」とは、どういうことでしょうか。 「できる」という言葉は、「できる=優れている」というような能力主義に結びつきがちですが、そうではなく、本書では「『できるようになる』という出来事そのものがもつ不気味な面白さや想像を超…

824 「難民は遠くないです」・・・ 「ノイエ・ハイマート」(池澤夏樹、2024年、新潮社)

タイトルは「新しい故郷」という意味です。難民の旅が描かれています。アブラハム一族も難民ではなかったか、と言われています。旧約聖書によると、四千年ほど前、アブラハムはチグリス・ユーフラテス河口を出て、川沿いに進み、古代シリア北部、現代のトル…

823 「人は皆ひとしく尊い、誰かを貶めてはならない」・・・ 「差別はいつ悪質になるのか」(デボラ・ヘルマン、2018年、法政大学出版局)

この本のタイトルを見て、悪質でない差別があるのか、差別というものはそもそも悪質なものなのではないか、と思う人もいるのではないでしょうか。あるいは、区別は悪質ではないが、差別は悪質だ、と考える人もいるでしょう。 けれども、差別という言葉は、「…

822 「七十年のまなざし」・・・「希望の力: 自由を使いこなすために」(深井智朗、2008年、教文館)

2年前に召された教会員の蔵書をご家族が、教会の皆さまに、と持ってきてくださった中にこれを見つけました。 著者は、これは説教集ではないとしています。「ここに収録された文章は、礼拝で語られる説教のように、聖書の解釈や解釈の伝統を厳密に吟味したり…

821 「メロディー、歌は説教」・・・「月曜日の復活: 「説教」終えて日が暮れて」(塩谷直也、2024年、日本キリスト教団出版局)

ぼくもほぼ毎週日曜日「説教」をし、その午後は疲れ気味ですが、月曜日には「起き上がって」、つぎの日曜日を目指して歩き始めます。 そんなわけで、大学の学生や各地の教会で「説教」をしておられる著者から学ぼうと手にしました。「まるで今日、初めて聖書…

820 「いのちは詩です」 ・・・ 「暗やみの中で一人枕をぬらす夜は――ブッシュ孝子全詩集」(ブッシュ孝子、2020年、新泉社)

巻末で若松英輔さんがつぎのように書いています。 「人は死んでも「死なない」。むしろ、「いのち」として新生することを、詩は私たちにそっと教えてくれる」(p.161)。その「いのち」は、ブッシュ孝子さんの詩の中にすでに表れています。 「あの日以来 私の…

819 「汝生命を奪うなかれ」・・・「旧約聖書における自然・歴史・王権」(山我哲雄、2022年、教文館)

本書には五つの論文が含まれていますが、そのうち、「旧約聖書における自然と人間」「旧約聖書とユダヤ教における食物規定(カシュルート)」「旧約聖書における「平和(シャローム)」の概念」の三つから、大切に思われた点について以下に記します。 (もう…

818 「神学校に支配されずに牧師になる新しい道」 ・・・ 「オンラインの神学 教える+学ぶ」(オギルビー著、大倉一郎訳、2024年、ラキネット出版)

本書は、オンライン環境での神学教育と学修について論じられています。 その利点として、たとえば、以下のようなことが挙げられています。 「オンライン教育は必然的にある環境を作り出せる。学生の人種やジェンダーや民族や障碍や社会的背景を、その学生が…

817 「差別克服は多文化共生の土台」・・・「路地の教室―― 部落差別を考える」(上原善広、2014年、ちくまプリマー新書)

たとえば、ある小学校のクラスに、中国籍、韓国籍、日本籍の児童がいたとします。そうすると、最近は「多様性の尊重」ということを言います。それぞれの個性、文化、歴史、言語を大切にしようと。「多文化共生社会を」と。しかし、これだけしか言わないなら…