本書の特徴は、書名にあるように、ヨーロッパ思想史を哲学と神学の両面から描いている点です。したがって、哲学者のみならず、神学者も数多く登場します。両者を兼ねていたり、どちらか一方に定義できなかったりする人物もいます。
「宗教的な霊性が哲学的な理性と統合されながら展開しているところに・・・・ヨーロッパ思想の最大の特質が認められる」(p.13)。
「宗教的な霊性」とは文脈によっては「神学」や「信仰」と呼ばれます。そして、この霊性は理性を支えるものであるという考えを著者は採用しています。
近代、現代は、霊性という土台抜きの理性が暴走している時代ですが、これをどのように克服していくかという課題がすでに生じていて、それが後世に引き継がれることを著者は期待しているのでしょう。
神学にも紙幅を割いた、四百ページにわたる、ひとりの書き手による、ひとつの執筆姿勢に貫かれたヨーロッパ思想通史がこの代価で読めるのはありがたいと思います。