その島では、男は祭司、神官にはなれない。歴史の語り部にもならない。いや、歴史そのものを知ることはできない。なぜか。それになろうとする少女と、それになろうとするが許されない少年。その理由は、巻末で一挙に明かされる。
東アジアのある国は、ある人びとを追い出しつづける。追い出されたら、たいていは死ぬ。しかし、まれに、ある島に漂着し、苦しみののち、受け入れられる人もいる。
その島では、恋愛は自由だが、結婚や家制度がない。子どもたちは、血縁関係によらないオヤの元で育ち、島で生きていくために自分が選択する技術をゆっくり学ぶことができる。
島の自然や主人公たちの心が深い音楽のように奏でられている。それに比べて、思想の叙述はやや厚みにかけるかもしれない。しかし、思想自体はとても魅力的なものである。自然や心の中に、もっと織り込むことができたのではないか。
かつて、男性以外はキリスト教会の牧師になれなかった。いまでも男性以外の牧師は少ない。3割にも届かないだろう。なぜか。
最初に少年と記した人物はそうすべきだったのか。そこも明かされるかも知れないという予感があったのだが。
しかし、そのような展開を思い描ける自由な小説だ。読んでよかった。書いてくださり、ありがとうございます。