219 「泥沼に咲く蓮たち」

「その先の世界へ」(長倉洋海、2014年、クレヴィス)

 スリランカでは、祈りの花には、蓮が好まれる、と長倉さんは言います。泥で濁った沼でも、きれいな花を開かせるから、とのことです。

 ならば、この写真集は、世界の各地で咲き誇る何輪もの蓮への扉なのでしょう。

 ぼくが25年前に初めて手にした長倉さんの本は、エルサルバドルの写真集。中南米の軍事政権の暴虐をもっと知らなければならないと思ったからです。そこには、たしかに、血を流し、倒れた人びと、その横で号泣する人びとがいました。

 けれども、驚いたことに、町の広場に集まった人びとの笑い顔や、教会でしずかに祈る人びとの姿も、あったのです。

 この写真集にも、夕食後に談笑するアフガンの貧しい鉱山労働者、馬で駆ける男たち、鳥かごの世話をする少女、市場で働くアフリカの女たち、先住民の信仰を伝える「死者の日」を陽気に楽しむメキシコの人びとの、濃い色彩とゆたかな表情が伝えられています。
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