同名の芥川賞小説が原作。
映画からは、父殺し、暴力夫殺し、王殺し、女性/母親の発揮する、暴力断絶のためのすさまじい力と生命力、フェミニズム、というテーマがわかりやすく伝わってきました。
田中裕子が野太い演技をしています。
ぼくの故郷の、どぶ臭い光景・・・恒見地区、旦過市場・・・に、爪まで入り込む土やタオルに沁みついて取れない汗の匂いを感じました。
ただし、暴力を暴くための暴力描写、とくに性の暴力を晒すための性描写はどうなのか、考えさせられました。たとえ、性描写が男性や権力の暴力性全体を象徴しているとしても。
原作にはないラストは、感動的と評されているようです。たしかに、マチズムに対するフェミニズムの勝利だとは思いますが、底が少し浅いかなと思いました。
それよりも、田中裕子が演じる主人公の母の最後の動きに涙腺が緩みました。いわゆるなんでも呑み込む母性愛とは違う母の姿が強いと思いました。原作は読んでいませんが、そこに書かれているのかもしれません。