74 「到着のつぎに来るものは」

“The Arrival”(Shaun Tan, Arthur a Levine, 2007)

Facebookで知り合った画家の友達が紹介してくださった珠玉の一冊。

この本から、ぼくは絵をていねいに読むことを教わりました。

タイトルの通り、貧困、暴政、戦争・・・何らかの事情による、ある国から異国への、あるいは、ある世界から異世界への、ある人の出発と「到着」、そして、その直後の出来事を描いています。

この本はマスコミで取り上げられて、「感動」物語として扱われた節もありますが(・・・ストーリーではなく、表現力にはたしかに感動します・・・)、むしろ、グローバル時代、いや、それ以前からの、移住民の体験、魂の揺らぎを誠実に映し出したものとして、ぼくは頁をめくりました。

今や移住民の経験は「到着」にとどまっていません。たとえば、日本社会におけるニューカマーと言われる、たとえば中南米からの移住労働者でさえ、滞日二十年を優に超え、葬儀や認知症など、高齢化の問題を迎えています。

邦訳が2011年に河出書房新社が出ていますが、文字は一頁足らずしかなく、この本の表す世界から言っても、日本語を母語とする人には、原著が良いでしょう。

http://www.amazon.co.jp/The-Arrival-Shaun-Tan/dp/0439895294/ref=sr_1_sc_1?s=books&ie=UTF8&qid=1353567814&sr=1-1-spell