ヨハネの黙示録などはめったに読みません。
「見よ、神の幕屋が人の間にあって、神が人と共に住み、人は神の民となる。神は自ら人と共にいて、その神となり、彼らの目の涙をことごとくぬぐい取ってくださる。もはや死はなく、もはや悲しみも嘆きも労苦もない」（21章3－4節）。葬儀でここを引用したり、二十年くらい前に解説本を一冊読んだりしたくらいです。
しかし、「読もう」とお誘いいただいたので、読んでみました。そして、ヨハネの黙示録は上記引用個所の他にも読みどころがあることを知りました。
「わたしは、すぐに来る」(3章11節)。著者はこれについて、「この問題の多い世界の歴史に『主が再び来たりたもう』というのが『ヨハネ黙示録』の信仰の中心である」（p.46）と述べています。この「わたし」も「主」もイエスのことです。
しかし、この「すぐ」はかならずしも「すぐ」とは限りません。
「殺してはいけないが、五か月の間、苦しめることは許されたのである。いなごが与える苦痛は、さそりが人を刺したときの苦痛のようであった」（9章5節）。
「いなごが与える苦痛」とは人間が世界で受ける諸々の苦しみに重なります。それが「五か月の間」とあることについて、著者は「これは『限られた時間』という意味である。苦しみはしばらく続くだろう。だが、永久ということはない。いつか止む」(p.95)と述べています。
「すぐ」なのか「しばらく」なのか、よくわかりませんが、いずれにせよ、苦しみは永久に続くわけではないということなのでしょう。
「わたしはまた、玉座と四つの生き物の間、長老たちの間に、屠られたような小羊が立っているのを見た」(5章6節)。
ヨハネの黙示録では「玉座」「四つの生き物」「屠られた小羊」といった「幻」が登場しますが、著者はこれは「幻覚」ではなく「普通の物の見方を超えたところから世界史の現実を見る」(p.60)ことだと言います。普通の物の見方をすれば、当時のローマは平和に見えたかもしれませんが、深く見れば、そこには支配者の暴虐があり、人びとの苦しみがあるのでしょう。ぎゃくに、希望が見えない、絶望しかないところを、深く見れば、救いの希望が見えるのでしょう。
「わたしはまた、火が混じったガラスの海のようなものを見た」(15章2節)。
著者によれば、ヨハネがここで見た「火が混じったガラスの海」とは、ヨハネより1400年前モーセが渡った（と旧約聖書・出エジプト記が言う）「葦の海」のことだそうです。イスラエルの民はエジプトで苦しめられていたが神はモーセをリーダーとして人びとを救い出した。それと同じように、ヨハネの時代（紀元一世紀）に迫害を受けている人びとも、かならず救われるというのです。
「彼らは地上の広い場所に攻め上って行って、聖なる者たちの陣営と、愛された都とを囲んだ。すると、天から火が下って来て、彼らを焼き尽くした」（20章9節）。
人びとを攻撃する者が滅ぼされる、という表現は、ここのみならず、旧約聖書にも出てきて、読者を悩ませます。敵や悪人、攻撃者に攻撃を止め、反省、謝罪はしてほしいが、滅んでほしい、神さま、そうしてください、とまでは思わないからです。しかし、著者は「これは、単に相手の部隊を打ち負かすというよりも、戦争そのものや軍事力そのものの廃絶を意味するであろう」(p.184)と記しています。これなら受け入れられます。暴力、加害、差別、抑圧そのものが無くなることを願います。
「わたしはまた、新しい天と新しい地を見た。最初の天と最初の地は去って行き、もはや海もなくなった」(21章1節)。
村上伸さんによれば、「海」とは、「悪によってこの世界を支配する『獣』（悪しき支配者）が出てくる場所」(p.188)だそうです。すると、その海がなくなるとは、悪しき支配者、悪、人が人を抑えつけたり、攻撃したりすることがなくなることでありましょう。
