536 「二億人が参加する『農民の道』」・・・「人新世の『資本論』」(斎藤幸平著、集英社新書、2020年)

 二酸化炭素の排出を今よりもずっと抑えなければ、地球は温暖化し、人が生活するには非常に厳しい環境になってくる。それは、今世紀すでに進行しつつあり、貧しい国の人びと、貧しい人びとがまっさきに被害者になる。この人びとは前世紀からすでに富の収奪と環境破壊の犠牲になっている。

 排出を抑えるには石油燃料使用を現状よりずっと下げなくてはならない。それには、エコバックの使用などではまったく追い付かず、成長経済ではなく定常経済を目指さなくてはならない。

 

 歴史を振り返れば、一部の地域に定常経済型の共同体が存在した。私有されず共同で使用する入会地と呼ばれる森林などもあった。現代においても、近代科学の良質の部分は用いながら、環境を守りながら富を共有しようとする都市や共同体が存在する。

 

 消費だけでなく労働の形態を変えなくてはならない。現代はケア労働のような機械化が困難で人間の労働に負う産業が軽視されている。賃金も安い。しかし、ケア労働は人びとの役に立つし、二酸化炭素の排出が少ない。(他方、マーケティング、広告など、なくてもよい労働が高賃金で、消費を促すことで二酸化炭素を排出につながっている。機械化は失業を招く。)

 

 「農民の道」という国際農民組織がある。農業を企業から自分たちの手に取り戻し自治管理することを目指す。わたしたちも、労働を企業から自分たちの手に取り戻す働き方、消費の仕方を考え、志向し始めなければならない。チェーン店ではない寺子屋塾、パン屋。スーパーではなく個人店主たちが共同で営む市場。コンビニではなく地元の産物が並ぶ便利な店・・・。

 

 小さな点も多くの人が始めれば線になる。「農民の道」には世界中の二億人の人びとが関わっている。

 

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