「被災弱者」(岡田広行、2015年、岩波書店)
被災者は、3月11日に被災しただけではありませんでした。その後の避難生活でも、住宅、仕事、健康、コミュニティなどの問題で、ダメージを受け続けているということをこの本を通して思い知らされました。
新聞記者が被災者やボランティア、行政担当者などを何人も訪ね、声を聞く中で、あきらかになってきた実態がこの本には記されています。
〇仮設住宅住まいの高齢者の認知症の進行
〇資金不足のため住宅の修理が進まない
〇復興事業ゆえに住み慣れた町から立ち退きを迫られる在宅被災者(仮設住宅ではなく、半壊などの家に住み続ける人)
〇再就職の見通しが立たず、仮設住宅を出られない働き盛りの男性
〇「災害危険区域」に指定されたゆえに、共同体性が崩壊する集落
〇仮設住宅のアコーディオンカーテンに寄りかかり、倒れて大けがをした高齢者
〇仮設住宅のカビやダニで喘息を悪化させる子どもたち
〇住んでいた地域から離れた仮設住宅で、孤立し、寂しさ、心細さを覚える人びと
〇隣人の顔も分からない、不安も口に出せない、見知らぬ場所での生活で、ただ息をひそめる人びと
〇義援金を受け取ると、生活保護を打ち切られた人びと
〇児童数が激減し、運動会、学芸会、部活などが困難になった小学校
〇出荷量は激減しても、価格が下がっていないとのことで、東電の賠償を受けられない漁業従事者たち
〇住民の意見を良く聞かずに、町の「復興」を進める行政
〇復興予算が、被災地以外の事業に流用、便乗消費されてしまう反面、被災者には十分な支援がなされていない現状
大地震、大津波、原発事故による放射能汚染の被害も甚大ですが、その後の行政の対応による二次被災にも気づかされました。
もちろん、行政の対応のすべてが不十分だったり、悪かったりするわけではありませんが、「汚染水はコントロールされている」という大嘘をついてオリンピックを誘致し、建築費をつりあげるなど、復興を遅らせている安倍政権の行政は「災害」、しかも、人災ではないでしょうか。