イスラム教、仏教、キリスト教と言った特定の宗教を信じていなくても、人間には、宗教心があります。
そして、特定の宗教が特定の表象(言葉)で言っていることは、人間一般の宗教心ではどのように言われているのか考えてみることで、特定の宗教の意味が深まる場合があると思います。
たとえば、神。これは、本書の著者が用いている以下のような言葉で言い変えることができるのではないでしょうか。
「永遠のもの」「無限のもの」「目に見えない尊いもの」「いのちの恵み」「自分を生かす自分以外の力」「人間の外の遠い尊いもの」「そこから自分がうまれてきた“もと“」「人間を生かす大いなるもの」
著者は西行の「何事の おはしますかは 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる」を引用していますが、これに従えば、神は、「どういう方かは分からないけれども、怖れ多く、そしてありがたい気持ちにならされ、涙がこぼれるようなお方」と言い表すこともできるでしょう。西行は宗教者ですが、この歌は、人間の宗教心一般にも通じるものでありましょう。
宗教心に続き、本書では、宗教の誕生、仏教の言う救済、宗教の危険性、宗教が暴力を乗り越えられるか、日本の宗教の特徴、これからの宗教などについて、わかりやすく書かれています。
「中学生の質問」に答える形式になっていますが、中身は、一般教養課程の大学生にも読み応えがあることでしょう。