193 「いつの日にか 帰らん」

 「希望をもらえる 日本の言葉 日本の歌が伝える53のメッセージ」(株式会社ヤマハミュージックメディア編、2012年)
 
 ぼくも、人生の折り返し地点はかなり過ぎ、天国の神さまのもとに帰る日も、以前ほどは遠くありません。

 「こころざしを 果たして、いつの日にか 帰らん、山はあおきふるさと、水は清き ふるさと」 ぼくは九州育ちで、家族や友を訪ねていくと、なつかしく感じますが、故郷だからそこに住もう、ということはもうないでしょう。けれども、いつの日にか、こころざしは果たせなくても、お帰り、おつかれさま、よく歩いたね、と神さまが迎えてくださると思うと心が和みます。だから、この歌詞は、天国のイメージと重なるのです。

 この本は、ピアノのおさらい会の記念品として先生にいただきました。子どものころに歌ったなつかしい歌が満載ですが、歌詞をあらためて読むと、自然豊かな故郷、朝、夕暮れなどが多く歌われていることを再度たしかめることができました。

 天国とも重なるはずの故郷の山河は、いまや、破壊され尽くそうとしています。人々のいのちが、ないがしろにされています。権力者、お金持ちの私利私欲によって。

 けれども、詩人は「きみ死にたまふことなかれ」と歌います。いのちは、戦争で殺し死ぬためにではなく、天国の入り口となる緑の山河の回復のために。放射能とたたかっている仲間の日々はまさに神の国建築現場なのですね。

 ぼくらは、今、どこに行こうとしているのか。農民でもないぼくが言うのは不遜ですが、人間が作りだしたり、掘り出したりした毒が、すっかり浄化された故郷の朝と夕をもう一度とりもどすために、真昼の道を歩みたいと思います。

 http://www.amazon.co.jp/dp/4636879813/ref=rdr_ext_tmb