(29)「この世界」

5:9-10  

5:10 それは、世の中の不品行な者、貪欲な者、略奪する者、偶像を礼拝する者と全然交際しないようにという意味ではありません。もしそうだとしたら、この世界から出て行かなければならないでしょう。


 わたしたちの生きる世界には、他者を傷つけたり、財産や栄誉を強欲に求めたり、他者を利用したり、他者から奪ったりする生き方が蔓延しています。パウロは、そのような生き方を「偶像を礼拝する者」と並べています。たしかに、神様ではなく、富や名声、物質的なゆたかさ、人からの誉め言葉を自分の支えとし、そのような自分に気付かないのであれば、それは偶像礼拝でありましょう。しかし、パウロはそのような世界とまったく離れたところに閉じこもってしまいなさい、と言っているのではありません。むしろ、そのような世界の中を、なお、キリストの十字架に従って歩みなさい、と言っているのです。信仰とは苦しみから平安へ、悪から善へ引っ越すことではなく、苦しみの中をキリストからの平安をもって、悪の世界の中をキリストからの善をたずさえて、歩き通すことなのです。

(※雑誌「百万人の福音」(2008年9‐12月)に掲載されたものです。新改訳聖書から引用しています。)