映画「シーズンズ」(ジャック・ペラン監督)
ヨーロッパの話に出てくる平地の森を歩いてみたいと思っていた。日本の山のような斜面の林ではなく。けれども、この映画によると、かつて自然と動物の王国だった森は人間によって崩壊され、動物は山に移動したという。平地の森を歩くことはもうできないのか。
氷河期末期の二年前から今日まで、動物たちの旅を描いたネイチャードキュメンタリー。
ジャコウウシ、トナカイ、ハイイロガン。森の鳥たち。キツネ、リス、オオカミ、シカ。自然動物の命がけの生態に肉薄する。
動物たちを脅かさないことを十分に考慮しつつ、動物の自然の動きに迫る撮影技術がすばらしい。手を伸ばせば届くような距離で渡り鳥と並行飛行する映像。疾走する動物たちと同じ位置の視線。技術や動物行動学が駆使されているという。
人間はその自然を侵害する。しかし、それも乗り越えることが可能だと言う。それには首をかしげた。
案の定、パンフレットでは、保全生態学者が正直に、動物に対する無知が克服され理解が進んだから動物と人間の春が訪れようとしている、いうのは楽観的過ぎるのではないか、と疑問を呈したうえで、これは「願い」であると理解した、とコメントしている。さらには、「願い」で終わってはならないという考えを示唆している。民主主義も自然保護も独裁打倒も破壊阻止も「願い」で終わってはならない。いや、という言い方でも終わってもならない。まさにナウシカを画きつづけなくてはならない。
渡り鳥を見てはエディバウアーを連想し、ヤマネコが獲物に飛びかかるまえの身を低くした構えの姿勢からは我が家のネコも若いころはこんなこともしたなと思いだした。
なお、この映画はジブリへのオマージュでもあるそうだ。なるほど、イノシシやオオカミには見覚えがあった。