305  「死者と親友になるまでの二十年」

映画「十字架」(五十嵐匠監督、重松清原作)

体育館の倉庫でマットでぐるぐる巻きにして蹴りまくる、ゴキブリを口に入れる。教室の片隅でズボンとブリーフを脱がせ女性の写真を見せ弄ぶ、それを女生徒たちにも見せる。

前半は、その凶悪、残酷、激痛、被害者の地獄、まわりの生徒たちの傍観あるいは沈黙を、ひしひしと感じたが、現実をリアルに伝えているのか、こんなものではないのか。

後半は、母、父、弟、ふたりの同級生の、その後の二十年のストーリー、というよりは、こころの旅が描かれている。

小出恵介木村文乃富田靖子永瀬正敏ら俳優陣が、それに肉迫する。

遺書には主人公に対して「親友になってくれてありがとう」と残されていたが、じつは、ここから、死者と親友になるまでの二十年が始まる。

親友とは、ボールをパスしあうものだ。けれども、最後は、どちらかがゴールに蹴りこまなければならない。ふたりが、パスもできればシュートもできるとき、親友が誕生する。

23年前の新庄市マット殺人被害少年のお父さまの記事を、この映画を観る直前にネットで読んだのは、偶然ではなさそうだ。

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