「マジ文章書けないんだけど」(前田安正、大和書房、2017年)
『この本の前半は退屈だが、後半は教えられることが多いので、皆さんにもお勧めします』。
・・・とするよりも、『前半は退屈だった。しかし、後半では多いに教えられた。皆さんにもお勧めします』とした方がよいようです。
「一つの文は一つの要素で書く。要素が増えたら、文をわける」(p.142)とあります。たしかにそうですね。上の例からもわかります。
前半は、「は」と「が」の違いとか、主語と述語の対応とか、わかりきっていることが続きましたが(もっとも、口はこれらを習得していても、文で説明することは難しいですね)、後半は、このような、なるほどと思う指摘が続出します。
「書き出しに前提はいらない。書きたいと思う部分から書き出せ」(p.148)。
『わたしを乗せた列車はトンネルへと入っていった』といった前置きなしに、『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった』と書き出すのでしょう。
「人間は『状況』に応じた『行動』をとり、それによって『変化』する」(p.154)。
「わたしは悲しい」、これは状況です。「なぜなら、こういうことがあったからです」あるいは「だから、何日間も人に会いません」、これが行動です。「ますます悲しくなりました」、これが変化です。これだけでも、「わたしは悲しい」というワンセンテンスが三倍くらいに膨らみそうですね。
「箇条書きのようにシンプルに書く。自問しながら書く。そうすると文がつながって一つの文章になる」(p.160)。
『わたしはいまとても怒っている』(なあぜ?)『大臣が嘘ばっかりつくからだ』(じゃあどうする)『テレビを消す』(それだと、世間のことがわからないよ)『新聞を読む』
「素材勝負、味付けは控えめに」(p.162)。
でもさあ、良い素材ってそんなにあるものでしょうか。素材を味付けするための、素材に苦労するってこともありますよね、同業者の皆さま?
「5W1Hで一番大切なのが『Why』 なんだよ。『なぜ』『どうして』っていう問いに答えるように書いていかないと、読み手がフラストレーションを持ってしまうんだ」(p.166)。
「『状況』ばかりが並ばないように『Why』 という問いをたてるということが、客観的な視点を持つということにもなるんだ」(p.182)。
なるほど。なぜ?どうして?と自問し続けることが、文章を書くコツなのですね。