本書の監修はミッションスクールの中学・高校で聖書の先生をしている牧師さんです。ということは、この本で取り上げられている、生きづらさ、家族や友だちとの関係、SNS、虐待、DV、愛、恋愛、性的マイノリティ、セックス、性にかかわる体の仕組み、といったテーマが、生徒さんを含む10代にとって、いまとても切実なものであるということでしょう。
執筆陣は多様で、すばらしい言葉がいくつも出て来ます。
「『私と私が嫌いなあの人の間に神さまがいる』と思ってください。私の嫌いなあの人と直接、話をするのは嫌でしょう。だから、神さまを間に挟んで話すのです」(三河悠希子さん)
「DVは、自分の怒りを自分でコントロールできない弱さや、自分で自分の誇りを保てないという情けなさを、相手におしつけているだけのことです」(坪井節子さん)
「まったく雲一つなく、まるで白金のような焼きつく天空が、大きなひとみのようにわたしの生命をみていたのです。わたしという存在すべてをつらぬく、ひとみの光。『ご大切に』というひとみ。自分中心の思いをうばい、ごまかしによって生きてきたそのごまかしをわたしから奪う、ひとみ」(宮本久雄さん)
「だれとつながっても自分の重荷を、自分のさびしさを手放すことは結局できない。このさびしさは、僕が他のだれとも置き換えられない『僕』であることと、深く深く関わっているから」(土肥研一さん)
ほかにも、渡辺和子さんの序文があったり、塩谷直也さんの塩谷節があったり、平良愛香さんの愛香調があったり、沢知恵さんが性を美しく歌った金東鳴(金素雲訳!)や茨木のり子の詩を交えて性について率直に詩的に述べておられたり、です。
性的マイノリティへの偏見がいまなお強いキリスト教界にあって、10代と向かい合う現場からこのような一冊が生まれたのなら、これはとてもすてきなことだと思います。