266  「現世で宗教の平和理念を実現させることについて」

創価学会と平和主義」(佐藤優、2014年、朝日新書

 佐藤優好きの同僚が「読み終えたからどうぞ」と譲ってくれた。「集団的自衛権に関する昨年の閣議決定公明党が骨抜きにした」という宣伝句に少し惹かれてはいたが、自分では買うには至らないでいたところだった。一年くらい前だったか、佐藤さんの「同志社大学神学部」を、やはり「もう読んだので差し上げます」と言って手渡したお礼ということだろう。

 2014年7月1日、集団的自衛権行使を容認しているという憲法解釈に変更することが閣議決定される。内閣は自民党公明党からなっていた。公明党には創価学会という母集団がある。この宗教団体には平和主義という理念があり、それが公明党にも反映している。それゆえに、公明党は、閣議決定文書にいくつかの楔を打ち込み、安倍首相や自民党が望むようなものにはさせなかった。集団的自衛権とは名ばかりで、じっさいにはそれを行使できない。それは公明党の平和主義のおかげだ、というのが本著の主張だと受け取った。

 この論を支えるために、おもにホームページや「人間革命」などの書物を資料に、佐藤さんは創価学会の歴史や考え方を本著の大半のページを割いて紹介している。

 これに対しては、おもに三つの評価がある。まずは、偏見や「都市伝説」に縛られることなく、創価学会というものを新鮮な視点でとらえ直している、というもの。つぎに、学会の広告塔になってしまった、というもの。それから、学会を紹介するふりをして、いわば、学会を利用して自分の言いたいことを述べているというもの。

 平和主義が学会員にどの程度浸透しているのか気になるところだ。それが単にお題目ならば集団的自衛権行使を阻止する力になるのか。また、閣議決定から一年後、集団的自衛権を行使するための安保関連法案が十もまとめて虚偽と暴力の中で国会で採決されようとしている今日、公明党の平和主義はどうなっているのだろうか。

 いずれにせよ、佐藤さんは、公明党や学会や、そして、キリスト教に対して、掲げている平和理念にしっかり立て、その理念をこの世界で実現するために、今できる政治的行動をせよ、とカツを入れているのではなかろうか。

 宗教は来世のことだけでない。この世をどのようにしていくのかということも忘れてはならない。宗教は国家とは違う価値観を掲げ、実現しうる(たとえば、相互扶助など)中間団体となりうる。これらの主張は正しいと思った。

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