「映画『ノア 約束の舟』を私はこう観る」を私はこう読む


「福音と世界 九月号 2014」

富田正樹さんによる「映画『ノア 約束の舟』を私はこう観る」は、映画に対する深い読みを、ひじょうに、わかりやすく、また、説得的に述べています。

富田さんは、人間を他の生物の頂点におく人間中心主義に対する批判を映画に読み取り、それは自己中心主義に重なるものであることを指摘しておられます。

また、人間中心主義とは一見反対に見える神中心主義(「おれの言っていることは神の意志に沿っているのだから、正しい!」)も、じつは人間の思い込みであることが描かれていると述べておられます。

つまり、この映画は「近現代文明批判であり、人間中心主義批判であり、宗教批判でもある、非常に思想的な映画」だと言われるのです。

そして、この映画は創世記の「ノアの方舟物語」の映像化ではなく、むしろ、「大胆に変形して語り直」していると説いておられます。

くわえて、変形や語り直しは聖書に対する冒涜ではなく、聖書自身が暴力的な物語や時代の制限を受けている素材の語り直しであり、聖書の読者にもそれが促されていることを示唆しておられます。

わかりやすいのですが、現代キリスト教が辿りついた大事な思想を、あざやかに駆使しておられると思いました。

映画は近くではやっていないようだ。DVDを待とう。

この映画は、もうひとつ、教会批判、現代牧師批判、現代教会権力者批判でもあるなあ。

聖書と言ってもそのまま語れない、おそろしいところもたくさんあるので、語り直しの促しには救われる気がする。