157 「生は罪の罰ではない」

 映画「かぐや姫の物語」(高畑勲監督、2013年)

 水彩画のような和風アニーション。
 
 かぐや姫は、地球では、男どもの所有欲に悩まされつつも、凛と自分を保ち貫く。

 月からの迎えの者は、そんな世界を「穢れたところ」と呼ぶが、姫は、「穢れたところなんかでない」と高く叫ぶ。

 姫は、権力と浄土を跳ね返し、「鳥、虫、けもの、草、木、花、春、夏、秋、冬」(劇中歌より)とそこを駆け回る人々「に触れたよろこび」と「ぬくもり」の記憶を「未来の希望」(主題歌より)にして、空へと帰って行く。

 死とは何だろうか。人生とは何だろうか。

 死は人生の記憶を失うことではない。すべてを忘れて浄土で昼寝をすることでもない。

 「いのちの記憶」(主題歌より)を灰にならない薪として、上へ上へと燃え続ける。

 おおたか静流さんや矢野顕子さんも想わせる主題歌。住職の家に生まれ育ち、自らも資格を持つという二階堂和美さんが作詞・作曲し、唄う。歌詞の通り「このからだの 端々にしみ込んでゆく」。

 からだに、よろこびがしみ込み、ぬくもりが充ちていることに気が付けば、はばたくことを恐れなくても、だいじょうぶ。
                  
 主題歌「いのちの記憶」は、アマゾンなどで映画のサントラ盤を検索すると、試聴できます。
                                                             
 http://kaguyahime-monogatari.jp/