154 「人の意見を聴き、納得して、自論を置き、賛成する」

 映画「清須会議」(三谷幸喜監督、2013年)

 ぼくの所属する組織の全国代表会議では、「議長や役員選挙ではこの人に入れてください、この議案には賛成してください、この議案には反対してください」というアンチョコが議員の6割くらいにわたされ、彼らはすべての選挙や議案審議に勝つ、という手法を使っていると聞いています。

 国会や地方自治体の議会でも、党議拘束による賛否表明は当たり前。

 人は議場でどうやって自分の考えを表明するのでしょうか。

 自分の信念か、他の人の工作によって最初から決めている意見を決して変えず、議場では、それを通すために強弁する人。

 他の人の顔色や動向や自分の利益に左右される人。

 自分の意見は持っていても、相手の意見に筋が通っていると納得すれば、変えることのできる人。

 この映画を観て、どういう誤読ノートにしようかなと考えていると、「十二人の怒れる男」を思い出しました。「十二人・・・」のように、発言者の緻密で論理的な意見によって人々の予見が覆されていく、というようなことはなく、映画では、舞台裏での策略が目立っていたのですが、ただひとり、相手の論に納得して自分の論を変えたように思える登場人物がいました。

 武闘・戦闘から評定へ、議論へ。三谷監督はそういうメッセージを出す人ではなさそうですが、映画を観て、あらためて、国会などでも、多数派による強行採決ではなく、熟議による政策、法案設計へと変わっていて欲しいという思いを強くしました。

主演の大泉洋がこれまでとは違う天下を目指す武士の姿を、役所広司が武骨で単純な男を、小日向文世が頭の良い宿老を、佐藤浩市が利益に目ざとい武将を、中谷美紀があかるくひょうきんで踊り歌う妻を好演しています。

 http://www.kiyosukaigi.com/index.html