「せいなるよるのたからもの」(絵と文:クドウあや、新教出版社、2013年)
出生前検査を受けるには切実な事情があるのかも知れません。
「あんしんのため」と言われるそうです。
けれども、この検査で対象となるのは特定の遺伝子だけであり、解説者は「誰ひとりとして完全に正常な遺伝子を持っている人はいない」と言います。
また、ある特定の遺伝子を持っていることが親の期待に反するように医師や親らが考えてしまうことがあるけれども、「ただの一度も親の期待を裏切らなかったという子育ては、おそらくありません。一枚一枚薄皮が剥がれていくように子どもへの期待が失われていくのが通常の子育てです。しかし、それを補って余りあるだけの、子どもに対する発見の時間があります」とも述べています。
本文は、やわらかな線と明るい色の絵、そして、素朴だけど、しっかりと語りかけてくる仮名文からできています。
生まれた時、親だけでなく何人もの人が喜んでくれたこと、病気や迷子といった心配なこと、はじめて歩いたり話したりした時のようにうれしいこと。そうしたことの積み重ねこそが、あらかじめの「あんしん」よりも、はるかにたしかな親子の土台であることを教えてくれます。
12月25日でなくても、昼間であっても、どんな状況であっても、子どもが生まれる時刻はいつでも聖夜なのではないでしょうか。