127 「あまちゃんの北鉄のモデル 震災と鉄道の意味」

コミック「さんてつ 日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録」 (吉本浩二、新潮社、2012年)

 NHKの朝ドラの「北三陸市」は「久慈市」を、そして、「北三陸鉄道」は「三陸鉄道」をモデルとしています。

 ドラマの、四半世紀前の開通シーン、震災時にトンネル内で急停車して津波を免れた乗客・乗員・車両のエピソード、区間や速度を大きく制限されながらもいち早く走行を再開させ沿線の人々の声援を受けた場面、三陸沿線の鉄道の高速道路とは違う意味などは、この本にも出てきます。

 著者は、3・11以後の岩手県沿岸部の町々と人々を外来者としてはよく取材していると思います。現地の方々がどのように思われるかはわかりませんし、それが大事たと思いますが、ぼくのような訪問者が読むかぎりでは、ぼく自身が案内していただいたり、写真で観たりして、記憶にとどめたりているのと同じような風景が、より臨場感をもって描かれていると思います。ボリュームは小さいですが、「はだしのゲン」のような迫るコマが並んでいます。

 映画にもなったルポ「遺体―震災、津波の果てに」の著者、石井光太さんとの対談もあり、姿勢が問われ自問もする取材者同士の思いや考えが交わされています。

 背景を少しでも知って、ドラマ、いや、ドラマが伝えようとする、また伝えきれていない現実を少しでもとらえたい、いや、せめて忘れたくない、無視したくないという思いの一助になりました。