122 「中高年が若い世代の声を聞くデモンストレーションとして」

「40歳以上はもういらない」 (田原総一朗、2013年、PHP新書

 40歳未満の評論家、各種NPO(病児保育、貧困層融資、ブラック企業社員労働相談)代表、シェアハウス企画者、日本紛争予防センター事務局長らと、田原総一朗との対談集。

 40歳未満がどんな発想をし、どういうふうに論じているかをまとめているだけでなく、いや、むしろ、40歳以上が40歳未満に耳を傾けるべきことを、田原さんが自ら範を示しながら、訴えるための本、と言うことができるでしょう。

 田原さんのまとめによれば、対談の相手達は、政治家や経営者たちが頼りにならないので、自分たちで世の中を良くしたい、と考えている。彼らにとって、経営とは社会貢献であり、企業拡大は必須条件ではない。「かわいそう」なのは若者ではなく、高度成長、バブル時代の体質から変われない大人世代。また、田原さんは自分の言葉として、いまや体制そのものがすっかり疲弊しているのだから批判しても仕方がない(本当かな?)と繰り返しています。

 では、40歳未満の人たちが何と言っているのか、ピックアップしてみましょう。

・年長フリージャーナリストは、マスコミは真実を隠ぺいし、自分たちこそがそれを伝えているという対立図式を不用意に持ち出し過ぎている。(そうかも)
・今、社会に欠けているものは善意ややる気ではなく、具体的な解決への事例集。(そうだ)
・活動と実践の姿を見せながら、社会的課題の解決方法を世の中に浸透させていくべき。(そうね)
・個人ではがんばりようのない人たちに機会を与えることが社会の役割。(そうそう)
・「劣悪な労働環境」は、中小企業だけでなく、大企業に広まっている。(そうだったか)
・若者は何十、何百という不採用通知を受けながら、「努力不足」「考えが甘い」「自己責任」と責められ、自分でも自分をそう責める。(そうだよね)
・「連合(日本労働組合総連合会)」の大部分はひどい。(そうらしい)
・従来は、権利を取り戻すことがテーマであったが、今は、自分と会社との関係を自分で変えるしかない。(そうかなあ)
ブラック企業労務管理の中には、若者の使い捨てが組み込み済み。(そうよ)
・酷使される若者の中にはうつ病などになり、生活保護に頼らざるを得なくなる。つまり、ブラック企業は国の社会保障制度に負担をかけている。(そうなんだ)
・低賃金、使い捨て→うつ病少子化→税収減、消費の落ち込み、というようにブラック企業はデフレを促進、「アベノミクス」も訴えるインフレを妨害しかねない。(そうも思える)
憲法を変えれば、アジア諸国との外交が悪くなり、経済的なマイナスが考えられる。(そうなのかもしれない)
・国境はあいまいにしたままでも、外交は可能。(そうでしょう)
・人々の気風を変え、「開かれたマインド」を持たせるには、地道な啓蒙活動しかない。(そうかもしれないけど)
 
 なるほど、そうか。その程度のこと? え、それはちょっと。いろいろ感じましたが、自分は52歳だから、未熟な40歳未満から学ぶことはない、これは最低でしょうね。かといって、若者の言うことはよくわかる、というしたり顔親父も、ちょっと。

 地道に読んだり聞いたり、地道に納得したり、地道に首をかしげたり、地道に自分も相手も変わったり、かな。

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