121 「2011年福島の断片を真摯に伝えるコミック」

「ディジー  3・11 女子高生たちの選択」(全二巻)(ももち麗子、2013年、講談社

 2011年度を福島の高校三年生として迎えた四人の物語。

 フィクションであり、原作もあるが、ももちさんは、福島の高校生との交流など、綿密な取材と、誠実な思いに基づいて、今なおつづく、複雑、多層、多様なリアリティの一部をよく表現していると思いました。

 何度も目をこすり、ハンカチを目に当てました。これまで、ぼくが聞いたり、読んだり、見たりしてきたことともかなり重なりました。とくに、最近、会津若松でお話を聴かせていただいた避難者たちの声との共振を感じました。

 「放射能」ゆえの福島県人への差別。傷口は完治することなく、むしろ、何度も開いてしまう。政治家、コメンテイターの二枚舌。米や野菜、食料を作る人々の落胆、絶望、寄せられる誹謗中傷。避難所生活の陰と光。子どもたち。友人、家族関係もひっくり返るまでに揺さぶられる。

 福島県の人々はこの作品をどう思われるのでしょうか。それが一番大事だと思います。

 以前に、三里塚の農民を襲った苦難を描いたコミック「ぼくの村の話」でも涙が出たことを思いだしました。

 悩んだ挙句に、高校三年生がついに出した決断は、意外でしたが、新鮮でした。

 既成の枠からこぼれるものを掬うために、オールタナティブを創造していく、そういう政治が確立されるべきだと思いました。
 
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