385 「なさそうで、ここにあり、遠そうで、わりと近い国」

「誰もが幸せになる 1日3時間しか働かない国 」(シルヴァーノ・アゴスティ著、野村雅夫訳、マガジンハウス、2008年)

1日8時間どころか、12時間、15時間と働く人びとが珍しくないようです。ほんとうにそんなに働かないと利益があがらないのでしょうか。

 コンピューター制御のオートメーションが発達した現在でも、製造業はかつてのように長時間、稼働していないといけないのでしょうか。それでも、生産高は時間に関係するようにも思えますが、では、商業はどうなのでしょうか。電通は社員の勤務時間が長ければ長いほど儲かるというような業種なのでしょうか。

 もしかしたら、どんな産業でも、皆が3時間労働で、社会がまわる可能性があるのではないでしょうか。生産、在庫、販売、需要、消費、賃金、価格、生活費、医療費、自然の再生コストなど、さまざまな変数を放り込んで、人間がいちばん幸せに生きられる、労働時間を計算できる関数は存在しないのでしょうか。

 この本では、旅人がキルギシアという小国に迷い込んでしまいますが、そこで見たものは、3時間労働だけではありませんでした。

「他の国々では毎日のように銃で亡くなった人々を埋葬し続けているでしょう。私たちは逆に武器を埋めることにしたんですよ」(p.56)。

「ここでは総理大臣というのはボランティアのような職業なんです」(p.57)。

 「武器には錆を着せればいい/そして犂には/きらめく光を着せればいい」(p.58)。

「私たちの国では、満場一致でないとどんな案も実行には移さないのよ」(p.65)。

ぼくたちもこんな国に行ってみたいですね。

 そんな国はどこにもないって?

 では、ぼくたちが創ればよい。

 無理だって?

 では、まず、ぼくとあなたの間でそうなればよい。

キルギシアも大きな国ではなさそうだから。

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