グアテマラ先住民の娘、マリア。名前だけは公用語のスペイン語由来だが、母父はスペイン語を話さない貧しい季節労働者。収穫が終われば農園を去らなければならない。
娘は二重の意味でマリアだ。中南米の貧しく虐げられる女性。男と子どもの世話をさせられるために望まぬ結婚を強いられるマリアたちのひとりとして。そして、子どもを宿したが、男には逃げられるマリアたちのひとりでもある。
蛇を退治しようとしたり、ぎゃくに噛まれたり、マリアが子どもを宿したり、巨大な魚のお腹の中のヨナを思わせる場面があったり、この映画には聖書のモチーフがいくつか感じられた。
そう言えば、この主人公、既視感があったが、そうだ、イエスの生涯を描いた映画「奇跡の丘」の冒頭に出てくるどんぐり眼のマリアだ。
この映画にはおかあちゃんがいた。母親だった彼女は映画の途中からおかあちゃんになった。おかあちゃんはマリアを火の山の胎内にかくまった。そこから母子、いや、三代の再生がはじまった。