274  「評価は遺児やその家族に委ねたい」

「ママがおばけになっちゃった!」(のぶみ、2015年、講談社

 知人に「いいよ」と紹介されて、この絵本を読んでみた。著者のご両親が同業の先輩で、とてもお世話になった。自叙伝的作品をいただいたこともある。おもしろい文、おもしろい人だと思った。

 その人が死んだ母親と母を送った息子を絵本でどう描くのか、興味があった。じつは、最近、死者と生者の対話についての本をよく読んでいるのだ。

 「ママは、おそらの うえに いったのよ」とおばあちゃんは言うが、おばけになったママは横で「いえのなかですよー!」と訴える。「ママ、もう かえってこないの?」と問えば、おばあちゃんは「そうね。」と答えるが、ママは横で「もう かえってるし、けっこう げんき! ホレ! ここだよー!」と訂正する。「ママに あいたいよー!」と叫べば、「おー! よしよし、ママに いま おもいっきり あってるよー」とママはアピールする。

 やがて、おばけのママは「ママなんて おっちょこちょいで、しっぱいの ほうが ウンと おおかったから。でもね、ああ! いきてて よかったって ことも たくさん あったわ」と語り出し、それは「あなたを 生んだこと」と続ける。さらに「かんたろうの いい ところも すきだけど、ダメな ところが たまらなく すきだった。だって、あたしに そっくりなんだもん」とつなぐ。

 ベストセラーだけれども、アマゾンレビューを見ると、この絵本の評価は二分する。涙が出るほど感動したという人もいれば、子どもには残酷だとか、大人には浅いとか、厳しい評価もある。ぼくは、幼くして、お母さんやお父さんを天国に送った子どもたちや、その子どもたちと一緒に生きてきた家族に、評価は委ねたい。

 ただひとつ。天国に行くまでの期間だけ生者とともにいて、やがて離れていくのではなく、死者は、ずっと生者のかたわらにいるのだと思う。著者も、もしかしたら、それを表現しようとしたのかも知れない。

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