445 「花も星も、言葉も行動も、すべては永遠と根源を指さしています」

「生きていくうえで、かけがえのないこと」(若松英輔亜紀書房、2016年)

 花の奥には何があるのだろうか。内側へと重なりあう花びらが収束する一点はどこにあるのだろうか。

 大地が芽を萌やし出す。湖の底にはこんこんと湧き出る泉がある。それらは、わたしたちの生きる世界とわたしたちにも、目に見えないがこれをつねにあらしめる根源があることをまざまざと物語っている。根源とは永遠の別名である。

 「生きていくうえで、かけがえのないこと」。これは、処世術ではない。かけがえのないことは、自分で獲得するものではない。言葉や花鳥風月を深くじっと眺めていれば、おのずと浮かび上がってくる根源と永遠のことだ。

 「書けないという実感は、自分のなかにある、容易に言葉にならない豊穣な何ものかを発見する兆しだともいえる」(p.134)。つまり、書くという言葉は「容易に言葉にならない豊穣な何ものかを発見する」ことを意味する。

  「何もの」とは何だろうか。「それは土に埋まった宝珠を掘り当てるような営み」(p.135)。マタイ福音書を思い出す。「天の国は次のようにたとえられる。畑に宝が隠されている。見つけた人は、そのまま隠しておき、喜びながら帰り、持ち物をすっかり売り払って、その畑を買う」。「天の国」とは、まさに、目に見えない神、つまり、根源であり永遠なる存在にほかならない。

 本著には「ふれる」「聞く」「愛する」など、二十五の動詞が取り上げられている。そして、それぞれが「かけがえのないこと」を志向していることがつづられている。

 「『念う』は、念願、念仏という表現に見られるように、意識の彼方、私たちが心であると感じる場所の、さらに奥深くで『おもう』ことを意味する」(p.101)。

 「人が働くのは、死すら私たちから奪えない何かをそれぞれの人生で実現するためではないだろうか」「働くとは自己を見つめ、他者と交わりながら、魂と呼ばれる不死なる実在にふれることである」(p.83)。

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